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新連載「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第1回 プロなのに、作りたいゲームが作れない!?

1.ゲームシナリオライターは夢をみられない

――ゲームシナリオライターとは、縁の下の力持ちである。

これは、私が教え子達に毎年伝えている言葉だ。
この言葉を伝えるたび、ゲームシナリオライターを目指す彼らの表情はキョトンとしたものになる。
それもそのはず。みんな、自分達が思い描いた世界をゲームにしたくて、クリエイターという道を目指しているのだから。

かくいう私も、子供のころから大好きだったゲームを自分で作りたいと思い、ゲーム専門学校に入学した。
そこで、たぐいまれなる才能を発揮させまくった結果(!?)。
在学中にもかかわらず、インターン先で乙女ゲームシナリオライターとして華やかなデビューを飾ることとなった。
そして卒業後。すぐにフリーのライターとして活動を始め、現在2022年――今年でライター歴15年になる。

申し遅れました。
ワタクシ、フリーゲームシナリオライターの『泉りお』と申します。

乙女ゲームから始まり、男性向け、IP作品(漫画・アニメ・小説が原作のもの)、絵本、ボイスドラマなど、この15年間、100本を超えるさまざまな作品に関わってきた。

そんな私が、8年ほど前からゲーム専門学校の講師として教壇に立つことになり、冒頭の言葉を夢見る生徒たちに初回授業でぶつけるわけだが……当然、深い理由があるので聞いてほしい。

私も夢と希望に目を輝かせていたころ、将来は「自分の思い描いた世界をゲームに出来る」ものだと思っていた。
ライターとしてデビューしてから1年、そして2年。
それはもう目の回るような忙しさだった。
3本、4本、作品を同時に抱えて、とにかくひたすら毎日シナリオを書き続ける日々。
眠れず体調を崩す日もあったが、それでも大好きな乙女ゲーム作品に関われるのだと、とにかく幸せでしかなかった。
……しかし。3年目になると、自分の中にモヤモヤとした想いが生まれてきた。

「あれ? 私……自分の作りたいゲーム作れてなくない?」

そう、気づいてしまったのである。

シナリオライターは、自分の作りたいものを作れない。
別の誰かが作りたいものを、形にする仕事。
それが、シナリオライターなのだと。

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知ってしまった現実。その先に見たものとは……?

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