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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第2回 ゲームシナリオライターなのに、企画会議に参加しちゃった!?

2.その会議に集いしは魔王軍七天王なり

5次元社の企画会議は、今まで私が経験した中でもかなり変わっていた。
最初に驚いたのが、会議に参加している人数だ。

オンライン会議ということもあってか、その日は私を含めて8名ほどのプロジェクトメンバーが集まっていた。
いわゆるプロデューサー、ディレクター、プランナー、デザイナー、ゲームシナリオライター、イラストレーター、エンジニア……ゲーム制作において必要なほぼすべての役割の人が揃っていたように思う。

開始直後から、私の脳内はハテナでいっぱいだった。

企画会議って、ディレクターとプランナーで行われるものじゃないの?
なんでこんなに人がいるの? こんなにいて、話がまとまるの?

今まで参加した打ち合わせでは、少なくて1人、多くて3人程度が同席していた。
企画会議に、ゲームシナリオライターがいることも、イラストレーターさんとエンジニアさんが同席していることにもびっくりした。
本来なら私達は「企画があってこそ必要とされる」の役職だと思っていたからだ。

だが、この場の空気に慣れていないのは私だけで、イラストレーターさんはもちろん、ほかのプロジェクトメンバーも楽しそうに語り合っている。
しかも、その話の内容が非常に濃いのだ。
おたくトークと言ってしまえばそれまでかもしれないが、古い映画から最新アニメの話まで、そのネタが尽きることはない(ストーリーだけではなく監督や原作者の話など、かなりディープなところまでお話されていた)。
私は初めての企画会議ということもあり、極度の緊張から周りの人が何を話しているのか理解できなかったし、自分から話題を振ることもできなかった。

ただ、これはだけは分かる。
ここに集いし7人はゲーム開発に慣れた猛者達であり、たとえるのなら魔王軍の四天王……いや、七天王だ。というとさすがに大げさかもしれないが、そのときの私、つまりこの手の会議に不慣れな私にはそう見えたのだから仕方がない。

そこに、ひとりだけ異質な存在。
魔王軍に入りきれてない8人目が私である。

……正直、かなり焦っていた。
このままでは、私の存在意義がなくなってしまうのではないかと。
私もプロのゲームシナリオライターだ。
負けたくない! メンバーの輪の中に入りたい! 出来るってところを見せたい!

そう思ってはみたものの、初めての企画会議である。
何をどうすればいいのか、まったく分からない。
ああ……ここにお馴染みの資料セットがあれば、いくらでも物語を紡げるのに。

そんな動揺を隠しきれないまま、企画会議は進んでいったのだが。
その「企画」の決め方こそ、私が一番驚いたことだった。
先ほど「こんなにいて、まとまるの?」と書いたが、見事にこの人数の意見が、誰一人不満を持つことなく集約されていく場面を目撃したのだ。具体的な方法は企業秘密?的なものだろうから、ここでは簡単に……。

ゼロからのスタートとはいえ、「推しノベル」シリーズで決まっていることもある。

・世界に向けたIP作品であること。
・魅力的なキャラクターがいて、誰もが自分の「推し」を見つけられること。

この軸を元に、事前に参加メンバーから16本ほどの企画案が挙げられていた。
現代モノからファンタジー、SFまで、そのジャンルは幅広い。

この中から、各自好きなものを選ぶのかと思いきや。
簡単に言えば、「まず基準を決めて、基準ごとの採点結果をもとに企画案をさらに練り上げていく」というものだった。

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決まった4つの基準とは? そしてついに、第1作が決定!

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