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古都京都の小学校で30万点のマンガを読む背徳感「京都国際マンガミュージアム」

京都市は794年(延暦13年)から1869年(明治2年)までの約1100年、「平安京」に都(首都)が置かれ、今も寺社仏閣や祇園(ぎおん)をはじめ、市内の至るところに重要文化財が点在しています。

『火の鳥』(手塚治虫)の木彫像(寄木造)

京都に選ぶ際は陰陽道も関わったと言われており、上京区晴明町にある「晴明神社」には陰陽師の安倍晴明が祀られています。
それゆえ、『双星の陰陽師』(助野嘉昭)、『少年陰陽師』(結城光流)、『陰陽師』(夢枕獏)など、「京都✖️陰陽師」を題材にした作品は数え切れず、舞台巡りの聖地巡礼にも事欠きません。

ミュージアム正門

今回は、この京都市にある日本最大級のマンガ専門博物館「京都国際マンガミュージアム」を、学芸室員でアニメ、マンガ、ゲーム、特撮などのメディアにおける表現手法やキャラクター研究をされている應矢泰紀氏のご協力により、通常非公開の収蔵庫も含めてご紹介します。

「本能寺の変」ゆかりの地に建つミュージアム

「京都国際マンガミュージアム」は京都市営地下鉄の烏丸御池駅を出てすぐの所にあります。
元々この場所には織田信長の京都での居住地「二条新造御所」があり、1582年(天正10年)の明智光秀による謀反(むほん)「本能寺の変」では、息子の織田信忠が最後を迎えた地でもあります。
その後、1587年(天正15年)に信忠を弔(とむら)うための寺院「大雲院」が建立され(1590年/天正18年頃移転)、江戸時代には貨幣の鋳造・両替を行う「金座」「銀座」が置かれました(1868年/明治元年まで)。

ミュージアム全景

登録有形文化財でもあるアール・デコ様式の校舎でコスプレイベントも開催

明治に入って1869年(明治2年)には、建築費二千両を地元住民等の寄付により調達し「龍池(たついけ)小学校」が開校しました。
126年後の1995年(平成7年)の移転統合により閉校しますが、地元住民の力で開校した学び舎(まなびや)として今も大切にされています。

柱に施された装飾

2006年(平成18年)に「京都国際マンガミュージアム」として新たな学び舎にリノベーションした際は、タイル張りの階段や装飾等アール・デコ様式の重厚な建築を堪能できるよう配慮されました。
保存と活用の施策が実を結び、2008年(平成20年)にはミュージアムを構成する校舎、講堂、正門および塀が文化庁登録有形文化財となります。
現在、講堂は市民コーラスなどの地域活動にも利用される他、レトロな校舎全館を使用したコスプレイベントは大好評で、恒例開催されています。

どっちを向いてもマンガだらけで読み放題

ミュージアム内は、1970年代以降に発行されたマンガ単行本を中心に5万点が常時読み放題です。
少年向け、少女向け、青年向けがフロア毎に配されています。

「マンガの壁」の一部

取材をした2022年7月22日(金)は既に夏休み期間に入っており、老若男女問わず沢山の方がそこかしこで読まれていて、一般の方が写り込まない書棚を撮影できたのはわずかでした。
また、ミュージアムに所蔵されているマンガのほとんどが有志からの寄贈なだけでなく、館外の方の協力による展示もあり、今でも市民による学び舎となっています。

「描くひと 谷口ジロー展」 8/29迄

現在、『孤独のグルメ』の作画を担当されたことでも知られ、2017年に惜しくも亡くなられた、谷口ジロー氏の企画展「描くひと 谷口ジロー展」が開催中です。
肉筆原稿とともに原稿をどう扱ったかまで分かる重厚な展示は、マンガ専門博物館ならではです。

「考古資料とマンガで見る呪術」9/5迄

そして、今回ご案内いただいた應矢氏が担当された「考古資料とマンガで見る呪術-魔界都市京都-展」は、同市内にある「京都市考古資料館」とコラボして、呪術の歴史、マンガ表現、実際に出土した呪物など、現実とフィクションの世界を行き来する、摩訶不思議な展示となっています。

ミュージアムの裏側、収蔵庫と研究施設としての顔

常時読めるのは全体の6分の1の5万点で、書籍など再販の可能性があるものに限られ、雑誌等は再販の可能性が低く二度と手に入らない貴重な資料のため、非公開の収蔵庫に保管されています。
また、貴重な資料を保護する為、一般的な図書館のように管理タグを本に直接貼り付けるのではなく、被せたビニールカバーに貼り付ける方法を取っています。
まだ分類とデータベースへの登録を進めている最中で、正確な収蔵数はわからないそうですが、既に収蔵庫が満杯になる日が近づいていて、さらなる収蔵庫を検討しているそうです。

非公開の収蔵庫を應矢氏にご案内いただく

このミュージアムは京都市と京都精華大学の共同事業で大学が運営していますが(博物館法では博物館類似施設に分類)、博物館は資料の収集・保存や展示するだけでなく、研究調査をする場でもあります。
ですので、研究調査目的であれば収蔵庫にある資料も、研究閲覧登録により閲覧が許可されます。
取材当日も、マンガ文化を研究されている方が、研究閲覧室を利用されていました。


収蔵されている資料は、常時閲覧可能なもの、収蔵庫に収められているものいずれも検索できますので、昔読んだあの本を一度探してみてください。

この夏はミュージアムへ

「京都国際マンガミュージアム」をはじめ、”推し”が関連していたり、資料・情報が詰まったミュージアムが実はたくさんあります。
この夏は是非一度はミュージアムへどうぞ。

追伸

今回ご案内いただいた、京都国際マンガミュージアムの應矢泰紀氏と、大阪樟蔭女子大学の小出治都子 講師、大阪国際工科専門職大学の尾鼻崇 准教授と中林の4人で、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC2022に登壇します。
「ゲームとミュージアム のオモテウラ〜ゲーム資料をどう扱う?〜」という博物館をテーマにしたセッションですので、ご興味がありましたら是非ご参加ください。

見学情報

名称: 京都国際マンガミュージアム
所在地: 京都市中京区烏丸通御池上ル
開館時間: 10:30-17:30 (最終入館 17:00)
休館日: 毎週火・水曜日(休祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料: 大人 900円/中高生 400円/小学生 200円
開館: 2006年11月25日
種別: 博物館類似施設、 大学博物館
館長: 荒俣宏
公式サイト: https://kyotomm.jp/

(中林寿文 記)

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