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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第3回 ベテランなのに猛勉強!? 苦手ジャンルに挑め!

2.苦手なのは知らないからだ

泉「実は私、SFとシリアスが苦手なんです!!」

はい。
第1回シナリオ会議で、早々に、堂々と、宣言したのは私です

プロの力を見せてやるとか、苦手だって言いたくない! とか、カッコつけるようなことを言ったが。
お仕事をしていくうえで大切なのは、「嘘」を吐かないことだ。
これは私が新米の頃、見栄を張って「できる」といったせいで先方や先輩にご迷惑をかけた経験から学んだことである。

「苦手だからできない」ではなく「苦手」であることを伝えたうえで、「自分にできることをやる」のが大切だと思っている。

けれど、プロジェクトメンバーの方々は口をそろえて
「大丈夫ですよ、みんなで考えましょう! 泉さんには乙女ゲームとして大事な部分をお任せします!」と、笑顔で返してくれた。

企画会議で「何を作るのかみんなで決めよう」と言われた時には呆然としたが、「みんなで考えましょう」の心強さったらない。

もちろん今までのお仕事でも、すべてを私一人が背負うのではなく、足りない情報は先方が集めてくれたりしていた。
だが、今回のように5、6人が一度に集まって(しかも役割がバラバラ)何時間もシナリオ会議をするというのは本当に珍しいことだった。

その言葉通り、誰かひとりがすべての設定を考えるのではなく。
みんなそれぞれが意見を出し合って、『バインド』の世界を少しずつ形作っていった。
会議参加メンバーの集合知はすごいもので、私の知らない情報が湯水のように湧き出てくる。
初めのうちはどうしていいのか分からず、その水に対し「おいしいです」とか「のど越し最高ですね」のような意見しか言えなかったのだが、いつまでもただ水を飲んでいるわけにいかない。

そもそも、苦手というのは「それに対する知識がないこと」だと私は思っている。
好きなものほど、持っている情報量が多い。
……つまり、苦手なジャンルを乗り越えるためには。

ただひたすらに学ぶしかないのである。

プロの苦手克服テクニックを期待した方がいたら申し訳ない。
この問題ばかりは、期末テストと同じだ。いい点数を取りたいのなら、頭に情報を詰め込むしかない。

シナリオ会議の場では、『バインド』の世界設定の参考になりそうな作品名がいくつも出てきた。
本作お舞台は『刑務所』ということもあって、システムや生活、看守と囚人の役割などを理解しておく必要があった。
期末テストと違うのは、すべてを覚える必要はなく、『バインド』にとって使えそうな「ネタ」だけを情報として引き抜いてこられることだろうか。
アニメや映画、ネットで調べた情報を自分用のメモに記録していく。
とあるシーンのイメージに『閃光のハサウェイ』が参考になりそうだということで、ひとりで映画館まで足を延ばしたこともある。ちなみにそのシーンは、わずか数秒だけだった。

一夜漬け、付け焼刃、そう言ってしまえばそれまでだが。
『バインド』が完成するまでの間、私の頭の中は「SF」と「刑務所」でいっぱいだった。
「知識」として得た情報で、プロジェクトメンバーと共に『バインド』の世界を鮮やかに色付けていく。

だが。順調に会議が進んでいく中、私には気になっていることがあった。

それは……『バインド』のゲームシステムだ。

15年ためていた欲が爆発!? ダブルヒーローにしてくださぁい!!

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