3.たとえよくあるゲームシステムだとしても
『バインド』のゲームシステムは、選択肢を選んだ結果により、ENDがいくつかに分かれるという、よくあるタイプのADV。
『バインド』も、このシステムをベースにしていたので、「推しノベル」の名前の通り主人公×ヒーローの1対1の恋愛を目的としていた。
だが。
私には、ずっとずっと……思っていたことがある。
なぜ、ENDがGOOD・NORMAL・BADばかりなのか。
なぜ、攻略対象がひとりだけなのか。
なぜ、フラグは親密度だけなのか。
今まで関わらせていただいた乙女ゲームは、すでにシステムが完成していて、そこにシナリオを入れ込む形が多かった。
つまり、どんなにジャンルやテーマが違っていても、物語を作る際には
・ENDは親密度によるGOOD・NORMAL・BAD分岐
・一本ルートなので攻略対象はひとり
・フラグは親密度のみ
この3点を必ず守らなければならなかった。
もちろん、このシステムだから作品が面白くないというわけではない。
魅力的なゲームはたくさんあるし、私もキュンキュンする作品を書かせていただいたし、このシステムはゲームに不慣れな人も迷わずに最後まで遊べる。
だが、今まで数々のゲームに触れ、趣味も仕事もゲーム三昧の私は、もっと何かできるのでは? と、乙女ゲームを愛するがゆえに欲求がたまっていたのである。
しかし、『バインド』のシステムはこれから新たに組み立てるのだという。
しかも、私が好きな場所に選択肢を入れることも出来るし、章ごとに話数も自由。
フラグによる分岐も可能で、さらにもっと細かいことも要望があれば……という状態だった。
「ゲームシナリオライターなのに、ゲームシステムの提案をしていいんですか!?」
また開いた口がふさがらなかった。
しかしここで、あの言葉が蘇る。
「何を作るのかみんなで決めよう!」
15年間、言いたくても言えなかった想いが、ムズムズと喉の奥まで上がってくる。
――言うなら、今しかない。
私は大きく息を吸って、口を開いた。
「ルート分岐でダブルヒーローいけませんか!?」
「フラグって3種類いれられますぅ!?」
「EDはトゥルーとかBADとかじゃなくて、もう完全に別物にできますかぁぁぁ!?」
15年ためこんでいた乙女ゲームに対する欲求が爆発した瞬間であった。
⇒次回「りおちゃんは語りたい!~古き良き乙女ゲームのシステムについて~」(仮)へ続く
文・イラスト/泉りお
※当連載の第4回は、8月18日(木)頃に掲載予定です