連載 ゲーム

しおにくが綴る「推さ日記」第1回:『束縛彼氏』(束縛AI対話システム搭載な女性向けゲーム)

ぶっちゃけ何をすればいいの?

 3つめの機能である「ペットカメラ」ですが、これも時間制限があり、ペットフードも有料です。例えばRAYNを通じて彼へ贈ったプレゼントが表示され、リアクションがあるなどあればよいのですが、ヘルプにも説明はなく、プレイした範囲ではそういう効果はなさそうでした。

 日や時間によって彼の所作が変わるということはなんとなくわかるのですが、ヒントがどこにもないため、ペットカメラを起動しては徒労に終わり、眺めているうちに時間制限で終了させられてしまう、というのを繰り返すことになります。

 これはトロフィーなどにも言えることなのですが、ノーヒントが多く、何をどうしたら獲得できるのかの導線がありません。

 新たにストーリーを進めた直後であれば必ず特別なモーションが見られ、以後は何らかの日時や天気の条件で見られる、という二段構えであれば満喫できたのにな、と思います。

 主要な3つの機能を触ってみて共通していることは、アクションに対するリアクションが保証されている安心感が、どこにもないということです。

 ストーリーは進まないまま。ペットカメラを起動しても彼の所作はいつもと同じ。RAYNのやり取りもままならず……。いずれも、時間や無料ゆえの制限で諦めざるを得ない。

 細かいことですが、機能を切り替えるたびに、ローディング画面とTips表示がされるのですが、これも少し古いと感じてしまいます。

プレイの理想と現実が食い違った不幸

 おそらく『束縛彼氏』については「RAYNをプレイの中心としてキャラクターとプレイヤーの親交を深め、その裏付けのもとストーリーをイベント感のあるものとして触れてもらう」「プレイヤーをアプリに向かわせるために通知や時間制限を束縛に模して使う」という方向性があったのではないかと推察できるのですが、前述のようにRAYNのやり取りを無制限に楽しむことはできないうえに、ストーリーの開放条件が厳しく、毎日触れたくなる要素が枯渇してしまうというのが現状です。

 もし改良するならば、毎日毎時触れるものとして、現段階では使途不明な「ペットカメラ」を思い切って活用する方向に舵をとり直し、キャラクターの動作を増やし、そこへの干渉もできるようにするのはどうでしょうか?

 開発コストのかけどころがモーションやリアクションの追加という物量になるので試算しやすいはずです。ペットカメラを通じて渡すペットフードや画面内に送り込むプレゼントは、標準的なものは毎日数回分無料で良い。

 そのうえで、毎日のカメラを通じた触れ合いに応じて、ラブがもらえ、特別なモーションをキャプチャーできたらリングをもらえるようにする。

 サーバーとのやり取りを増やさずに、端末側で処理をするペットカメラが起点になるように、ここをいわゆる「放置ゲーム」的に繰り返し触れるようにするわけです。

 ストーリーを進めるにあたっては、ハードルをリングやラブを条件にするのではなく、「RAYN」でのAIの成長度に紐づけるとゲームらしさが増します。AIの成長度を厳密に測ることはできないので、やりとりしたWORD数などをもとに強引に算出する。会話の内容をスコア化するのは難題ですが、ゲームですのでそこは割り切れます。

 今は、フリートークの結果として、プレイヤーにどんな嬉しいことが起こるのかが謎なので、無限に会話がしたくなるわりに、上限があって嫌な枷になるという矛盾があるのですが、会話を上限まで繰り返すことでAIの成長が可視化され、ストーリー進行に繋がるとなると、毎日可能な限りRAYNで会話をすることに意味が発生するわけです。

 ストーリーの進行によって、ペットカメラ内で見られるモーションが増えていったり、ストーリー内で手に入れたアイテムが現れたりしていけば、ペットカメラ→RAYN→ストーリー→ペットカメラ→……という循環が発生するので、これで一応のプレイサイクルは成立すると言えます。

 何らかのハードルを設けてそこで広告を見せたり課金トリガーにしたりというのは、近年の「ハイパーカジュアルゲーム」の流れではあるのですが、本ゲームはそれとは一線を画しているもののはずです。

 推し事を喚起しようと思ったらハイパーカジュアルのように「ここらで課金したろ」のノリでは立ち行かない。「彼にプレゼントを贈ろう→広告を見てゲットしよう」のほうがまだ自然です。

 このキャラクターがどのように振る舞ったらプレイヤーの感情をくすぐれるか。そしてそのために機能と技術はどう役に立つか。その視点なしには行き詰ってしまうわけですが、『束縛彼氏』はそのバッドケースをいくつも踏んでしまっています。

素直に推させて!

 リリース後、細かなバグ修正とバレンタイン・ホワイトデーや無人島サブストーリーの追加はされていますが、抜本的なプレイサイクルの改善がなく、これらをまったく楽しめていません。

 新しい“推し”が見つかるかも! と挑んだ『束縛彼氏』アプリですが、プレイすればするほどシステム側の不満が高まってしまい、魅力的なはずのキャラクターとの交流も、何かするたびに阻まれてしまうような、そんな気になってしまいました。

 記念すべき第1回、素直にキャラクターを推させてほしい、という希望は一歩手前で叶わず、でしたが、こんなに一つのアプリのことを考えて、欠点を超えさえすれば好きになれるかも、という経験は初めてでもありました。これって、情が湧いたってことになりますよね、アプリそのものに……!

(おわり)

執筆/しおにく

1 2 3
RELATED POST