連載 ゲーム

「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第4回 小学生なのにガチ恋!? 初恋相手は守護聖様!!

3.“ゲーム”であることを最大限に生かしたい

その後。紆余曲折あり、乙女ゲームのプランナーではなくシナリオライターとしてデビューすることになったが、乙女ゲームに関われていることが最高に幸せだった。
だが、私がプロとして「作る側」に回った時には、乙女ゲームの傾向が大きく変わっていたように思う。
それは、圧倒的に「ADV」や「ノベル」タイプのゲームが増えたこと。
私が乙女ゲームにハマりにハマっていた頃は、「SLG」の恋愛ゲームが多く目にとまった。
この15年を振り返ってみても、私が恋愛SLGのシナリオを担当したのはほんの数本にしか満たない。
要因のひとつとして、携帯端末でも乙女ゲームが遊べるようになったこともあるだろう。
忙しない日々を過ごす乙女達には、片手間でお手軽にできる恋愛が求められているのだ。

今や主流となったADVにも魅力は多々あるが、『アンジェリーク』や『ときめきメモリアル』で快感となってしまった没入感や達成感を、私はどうしても手放すことができない。
……そして、なにより。
「SLG」には「ADV」や「ノベル」では表現しきない、「同時キャラ攻略」の魅力があるのだ!
一途にイケメンを想うのも素敵だけれど、ゲームの中では自由に恋がしたい! 途中で心変わりしたい! 二股、三股したっていいじゃない! だって、ゲームなんだから!!

……と、まあこんな感じで。
古き良き乙女ゲームを愛するがゆえに、システムに対する強いこだわりを持ってしまった。
正直、この偏った嗜好のせいで今の時代に置いていかれていると思う。
本来ならば、今の時代に合ったニーズを理解し、それに応えていくべきなのだろう。

だが、元はプランナーを目指していた身。
頭の中で溢れる出るアイデアを、とめることができない(システム愛もとめられない)。
……そして、ついに溢れてしまったのが前回の叫びである。

「ルート分岐でダブルヒーローいけませんか!?」
「フラグって3種類いれられますぅ!?」
「エンディング(ED)はGOODとかBADとかじゃなくて、もう完全に別物にできますかぁぁぁ!?」

私がどんな思いで叫んだのか、分かっていただけただろうか。しかし、聞いてほしい。
決して『B.I.N.D. 』(バインド)のシステムを『ときめきメモリアル』に作り替えろと言ってるわけではない。ローザを育成し、レインとシエロとデートがしたいのでもない。
私が提案したのは、『従来のノベルの基本システムはそのままに、シナリオの書き方を変えれば実現できる案』である。

EDまで一本ストーリーの読み物であることは変わらない。
だが、そこにフラグとルート分岐を多数入れることで、小さくても物語に変化をつけられる。
それはすべて、プレイヤーの選んだ行動によるものだ。
そしてEDもまた、プレイヤーの選択次第で結末が大きく変わる。
ただ読むだけじゃない。プレイヤーの意志も物語の一部だと感じてほしい。
それができるのが、ゲームなのだから。

今回提案させていただいた中で、私が一番気に入っているフラグ分岐がある。
それは、プレイヤーの選んだ行動により、後のキャラクターの反応が変わるシーンだ。
例えば、1話の選択肢で「リンゴ」を選んだ場合。3話の会話の中で、「リンゴ」の話が出てくる。当然「リンゴ」を選んでいなければ、別の会話が発生する仕様だ。
これはスマホ用のノベルタイプゲームでは、珍しいシステムだと思う。
その分、プログラマーさんが大変な思いをしたはずだが、私は大満足している。本当にありがとうございます!

おそらく、一周プレイしただけではシナリオの変化に気づかない人もいるだろう。
ひとつのEDだけで終わらずに、ぜひすべてのルートを見てほしい。
そこには私の魂の叫びと、プログラマーさんの苦労と、私の無茶な提案を許可してくださった、5次元社の乙女ゲームに対する強い想いが込められているから。

⇒乙女ゲーム愛を語れて大満足! 次回はついに『バインド』のキャラクターの誕生秘話!

文・イラスト/泉りお

※当連載の第5回は、9月1日(木)頃に掲載予定です

1 2 3
RELATED POST