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しおにくが綴る「推さ日記」第2回:譲れない想い、譲れないデータ(推し活×NFT・SBT)

NFTって何?

 このブロックチェーンの仕組みを使って、「改ざんができない≒コピーができない」という触れ込みでブームになったのがNFT(Non Fungible Tokenの略)です。「非代替性トークン」と訳されることが多いです。代替性に「非」がついているので、「置き換えがきかない」という意味で受け取るのがいいでしょう。

 例えば、10円玉というトークンを考えます。Aさんが持っている10円玉とBさんが持っている10円玉は交換しても何ら価値は変わりません。これは代替性があります。
 お札にはシリアルナンバーが書いてありますが、そんなものが書いてあったところで、交換しても価値は変わりません。
 シリアルナンバーを検証して何番なら使える/使えない、などという処理を社会ではおこなっていないからです。ですからお札にも代替性があります。

 アイドルのサイン色紙があったとします。「Aさんへ」と日付入りで書かれたサイン色紙は、Bさんの持つアイドル雑誌の付録のサイン印刷物とは、代替性がありません。
 当然、コンビニのコピー機でAさんのサイン色紙をコピーしても、出てくるのはA4の用紙にトナーで吹き付けられたもので、カジュアルコピーでしかありません。
 Aさんの持つサイン色紙は完全に原本ですから代替性がない、非代替性すなわちノンファンジブルなわけです。

 この非代替性の概念をブロックチェーン技術を用いてデジタルデータに適用すると、それはNFTと呼ばれるものになります。

 さきほど、デジタルデータが人類にもたらした画期的な機能は「コピー」であると書きました。NFTを用いるということは、その利点をわざわざ捨てて、移転の履歴を持ち続けることによって「遡ればこれが原本だってことは分かりますよね?」と言わんばかりに、カジュアルコピーされたものとの区別がつく、ということです。

 ではなぜ胡散臭いのか。

 ブロックチェーンで扱うデータですが、あまり大きなサイズのものは適していません。せいぜいフロッピーディスク1枚分(ご存じ?“2HD”でも1.44MB)が関の山です。なぜなら、世界中のコンピューター(ノード)が演算に参加するので、巨大なファイルサイズは現実的ではないのです。

 コンピューターをつけっぱなしにしているときの電気代を気にしたことが無い人には、この資源の無駄遣いが分からないと思いますが、ブロックチェーンのネットワーク上で巨大なデータが演算されると、大げさですが世界中でヤシマ作戦が行われるようなものなんです。ほんとうに大げさな表現ですが。

 演算にはコストに応じた手数料が必要で、NFT取引で使われる暗号資産の一部がネットワークに吸われていきます。こういった演算資源の無駄を避けるために、NFT内には「メタデータ」としてURLを埋め込むだけにしてデータサイズを小さくし、実際に消費者が目的とする中身はそのURLに示されたサーバー上に置く、ということが行われています。

 例えばアイドルのブロマイドがNFTになったとして、4Kサイズの高画質画像はブロックチェーンデータに載せられないので別途サーバーを用立ててjpegファイルとして格納し、そこへのURLをメタデータとして書き込んだNFTを流通させる、となるわけです。

 消費者が欲しいのはブロマイド写真のjpegデータだと思うのですが、暗号資産をもって購入したものは実はそこへのURL……。こういった説明が乏しいまま話題性だけでNFTが「唯一無二のデジタル資産として売買できる」と賞賛されたので、冒頭に書いたように「胡散臭い」イメージがついてしまった、と言えます。

 もしブロマイドのjpegファイルが格納してあるサーバーが故障したり、サーバー会社が倒産したら、手元に残るのはアクセスしようもないURLが書かれた、もはや譲渡や転売する価値もない、よくわからない文字列のゴミデータです。残念でした。

 いや、その前にjpegデータならば表示された時点で端末に保存してしまえばいいじゃないですか。あれ、カジュアルコピーできちゃったよ。じゃあNFTにする意味って何だったの。レシート代わり? 未来永劫まで履歴が残るレシート。SDGsですね(棒読み)。

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