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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第6回 真面目に議論しているだけなのに、面白すぎた○○の件

2. シナリオとイラストの深い関り

キャラクター設定が決まれば、次に必要なのがキャラクターデザインだ。
特に乙女ゲームは、ビジュアルが命
恋に落ちる相手になるのだから、一番こだわるべきポイントである。

だが、私はゲームシナリオライター。ここでできることはない。
後のことは、イラストレーターさんにお任せして、裏でひたすらにシナリオを書き進めるつもりでいた……のだが。

当然のように、キャラクターデザイン会議にもアサインされた。

企画会議には慣れたつもりでいたのが、まさかキャラデザ会議にも呼ばれるとは思っていなかった。
こういったゲーム案件では、キャラクター設定についてライターから意見を出すことはあっても、そのビジュアルデザインについてまで意見を求められたり、ましてや一緒に話し合うことはまずない。
シナリオライターの元には後日、「完成したキャラデザ」が送られてくるものだ。

キャラデザ会議に参加することには驚いたが、正直……めっちゃくちゃ嬉しかった。
当連載を見てもらえば分かるように、私は絵を描くのが好きだ。
もちろん趣味の範囲内ではあるが、それなりに「乙女ゲームに関するイラスト知識」も持っているつもりだったので、それを使える日が来たことが嬉しくてたまらなかったのである。

会議では、イラストレーターさんが中心となり、どういうデザインにするかの話し合いが行われた。
ただカッコいいキャラクターを描けばいいという話ではなく、「世界」に向けたデザインを考えなければならなかった。
絵柄は、可愛いのか、シンプルなのか、リアルなのか、筋肉の付き具合、頭身、人種、目の色、髪の色、肌の色……等々。
細かいところまで決めていく必要があった。

全員で意見を出し合い、イラストレーターさんが描き起こす。
実際のラフを見て、また全員で意見を出し、細かい調整を繰り返していった。

そうして生まれたのが、このキャラクター達である。

キャラクターデザインが決まれば、次に必要なのは「立ち絵」「スチル」(詳細は後述するが、ひと言でいえば「挿絵」)だ。
立ち絵の表情差分についても話し合いがあったのだが、今回は「スチル」について話しておきたい。

イラストとシナリオはその役割が違うため、ほぼ交わることはないのだが、「スチル」だけは、シナリオと深い関りがある。
それは「スチルの挿入箇所」を、シナリオライターが決めているということ。
もちろん作品によっては、あらかじめ挿入箇所が決まっているものもある。
だが、プロットから物語を作った場合には、こちらに一任されることが多い。 今回のバインドもそうだった。

ちなみに生徒達に「スチル」の話をすると「スチルってなんですか?」と聞き返される。乙女ゲームで育った私にとっては、「スチル」「CG」という言葉は共通用語だと思っていたので、非常に驚いたのだが。
今の子供達はノベルやADVよりも、アクションやFPSに触れる機会が多く、スチルが出てくるようなゲームをプレイしていないことに気づいた。
スチルとは、たとえるなら小説の挿絵である。
物語の中で「見せ場」となるシーンに挿入される、一枚のイラストのことをいう。 乙女ゲームでは、「抱き合う」「キス」など、プレイヤーがイラストで見たいと思うようなシーンに使われることが多い。

つまり、スチルは物語の「見せ場」となるシーンを指定しなければならないのだ。
だからといって、見せ場すべてに入れればいいというものでもない。
通常、メモリなどの様々な制約でスチルの枚数は限られているし、同じようなシーンに入れても意味がないのだ。

プレイヤーにとって、スチルは「ご褒美」である。
同じケーキをいくつも食べるより、色んな味と見た目のケーキを食べたほうが、満足度は高い。
乙女ゲームでは「抱き合う」「キス」がよく出てくるが、同じ構図やシチュエーションにならないように、シナリオでアレンジを加えていく必要もある。
ほかのゲームシナリオライターがどんな考えをもってスチルを指定しているかは分からないが、私の場合はスチルの構図やバリエーションなど、ご褒美が重ならないように意識して挿入箇所を決めている。
私自身、絵を描くのが趣味なため、スチルに強いこだわりを持っているのは確かだろう。

そんなキャラデザ会議の中、私が一番印象に残ったことがある。 それが「レインの乳首描写問題」だ。

面白過ぎて大感動! ちっちゃなワンポイントにこだわれ!

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