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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第7回 お仕事なのに楽しんじゃった!? やっぱりゲームが大好き!

3.大好きを仕事にしたいなら、その想いは胸に秘めるべし!

さて。ついに“なのに”連載も最終回をむかえる。
赤裸々に語りすぎだと途中で止められるのではないかとヒヤヒヤしていたが、なんとか最後まで書ききることができてホッとしている。
同業者の方は「あるある」と思ったり、ゲームシナリオライターを知らない方は「なるほど」と思ったり、私の教え子達は「さすが先生! スゲェ!」と感動したことだろう
(ちなみに母も読んでくれているのだが、「あんたそんな仕事してたのねぇ」と、15年目にして娘の仕事を理解してくれた)。

今回のお仕事では一緒に縁側に並ばせていただいたが。
やはり私は、ゲームシナリオライターは縁の下の力持ち的な存在だと思う。
私はそこでの立ち回り方に、プロとしての自信と誇りを持って仕事をしている。
他人が思い描いた世界に色を付けて形にしていくことは、決して誰にでもできることではないし、私はそこにゲームシナリオライターとしての面白さを見出している。
今回のように、自分の持っている才能や知識をフルに使わせてもらったことは、いい経験になった。今後どんな仕事を受けるにしても、この経験がきっと役に立つだろう。

生徒達によく言う言葉がある。

「どんな経験も絶対に役に立つ。自分の中にないものは、形にすることができない。失敗も成功も、嬉しいことも悲しいことも、素敵な恋もつらい恋も、かならずクリエイターとしての糧になる。いらないものなんて、この世界にはない。どんなことにでも興味持って、自分の中にストックしていこう」
これは常に私が自分にも言い聞かせている言葉で、新人時代の失敗から「自分にはあまりにも知識と経験がなさすぎる」と猛省し、自分をとりまくすべてのものに視線を向けるようになった。その結果が仕事に出ているのかは正直分からないが、プロとしての自覚は強く持てるようになったと思う。
なにげなく過ごしているだけの日々でも視点を変えれば、学べることはたくさんある。
いつもスマホを見ながら乗っている通勤・通学電車。時には顔を上げて、社内を見回してみたり、外の景色に視線を向けてみてほしい。

最後に。
ゲームシナリオライターを目指すクリエイターの卵達に、どうしても伝えたいことがある。
それは――

「大好きを仕事にしたいのなら、その想いは胸に秘めるべし!」、だ。

今まで私は何百人もの生徒を教えてきたが、その中でプロのクリエイターになれた子は3割もいないだろう。夏休みが明ければ出席率が落ち、2年になる前に辞めてしまう子もいる。
その理由のひとつが「ゲームが大好きすぎること」だと私は思う。
「好きなものを仕事にできる」と嬉しい気持ちが勝り、現実を知った時のダメージが大きすぎるのだ。
この道を選んだ時点で、「これが天職だ!」と思っている子が多いだろう。
だが、そんな気持ちを挫かれてしまったら、もう一度立ち直るのはなかなか難しい。
だから、夢に向かう前に心の準備をしておいてほしい。
プロにとって必要なのは「大好き」の気持ちだけではない。
むしろ「大好き」が壊されないように、胸の奥でしっかりと守っておくべきである。
必要なのは「知識、技術、経験」そして、「文章を書ききる力」。
たとえ中身が酷くても、何十万文字も書ききることは、誰にでもできることではない。
短い話でも“END”まで書ききることは、誰にでもできることではない。
それができるあなたならば、なによりも「大好き」を大切にしてほしい

大好きだけを身につけて、戦場に出てはいけない。
その気持ちは、本当にピンチになった時に引っ張り出すような最終奥儀なのだ。
それまでは、色々な知識や技術を武器防具として身につけて戦ってほしい。 大好きを振り回して戦うようなことだけは、絶対にしないように。

あなたにとって大好きは創作力の源のはずだ。
それが揺るがない限り、どんな仕事だってきっと乗り越えられるだろう。
そしていつか。
大事にしてきた大好きを、全力でぶつけられる仕事に出会う日が来る。今回の私のように。
その時に備えて、少しずつ自分の武器と防具をレベルアップしていこう!

いつか、どこかの作品で。
この記事を読んでいるあなたと、一緒に仕事ができたら嬉しいです。
その時が来るのを、楽しみに待っています。

ゲームシナリオライター 泉りお

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