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しおにくが綴る「推さ日記」第3回:推し上手は推され上手になれるのか?(『Idol Manager』)

まとめ:シミュレーションによる疑似体験とは

 一般的に、経営シミュレーションゲームは「パラメータの多いリソース管理ゲーム」であることが多く、リアルタイム制でもターン制でも「何かを減らして何かを上げる、その際に別の何かも減るのでじわじわと総じて何かが上がるようにしてカバーする」の繰り返しになります。

 そこに、ストーリーやキャラクターによるフレーバーと、モチーフのエッセンス、こだわりゆえに搭載された特徴あるゲームシステムが合わさり、現実の題材を模した「シミュレーション」たり得ているわけです。

 今回プレイした『Idol Manager』は、経営シミュレーションゲームとしては序盤の緊張感に反して、儲かるようになってからの作業感が強いです。

 初回プレイこそ破産まっしぐらでしたが、慎重にプレイしてみるとリソース管理ゲームとしては大味な部分もあり、都度の采配によって展開、これはウォーゲーム的に「盤面」と言ってもよいと思うのですが、これが大きく変わるような意外性で楽しませてくれるギミックはそれほどありません。

 本ゲームにおいてそのコマンド選択のルーチンプレイを起因としたマンネリ感を打破しているのが、予期しないトラブル群と「ストーリーモード」で語られる内容だといえます。つまり、シミュレーションゲームとしての大筋の展開は「頑張れば経営はうまくいく」のみで、変化の少ない部分を巧みなフレーバーとテキストが補っているわけです。

 アイドル同士のいざこざやトラブル、ファンを巻き込んでの炎上は、フィクションとリアルの狭間で「こんなことが問題になるの!?」や「人間は愚か……」から「有名アイドルグループのメンバー卒業の裏でもこんなことがあったのかな」といった感想を惹起します。しかもこういったイベントのバリエーションがとても多く、発生を楽しみにしてしまうほど飽きさせません。

 総じて、「ゲームの皮を被った疑似体験」として『Idol Manager』は優れていると言えます。

 欲を言えば、ゲーム冒頭で不二本に『もし「金を払うからおたくのアイドルを一晩貸してくれ」と言われたら、君はどう答える?』と問われた内容を地で行くような「アイドル達を素行の悪いIT企業社長らと合コンさせ、持って帰っていいですよと囁く」とか、「若い政治家にアイドルをあてがって夜伽させ権力の弱みを握る」とかの、現実に無さそうで有りそうで無さそうなフィクションの部分があってもよかったんじゃないかと思うんですが、それだとあまりにリアリティを失ってしまいますかね……?

 最後に、ゲームオーバー時にあるアイドルに言われたセリフがめちゃめちゃ刺さったので貼っておきます。

 このアイドル、紐付き援助10,000,000円でグループに入ってきて、仕方なく3回もシングルのセンターにしてやったんだよ……諸行無常ッ!

(おわり)

執筆/しおにく

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