新年あけましておめでとうございます。年始ということで、(まだ2回目ですが)恒例の「女性向けアプリ市場」の振り返りを行っていきます。
なお前回<こちら>、「女性向け」という分け方自体がナンセンスになりつつあると書きました。その考えはこの1年でさらに強くなっていますが、(おそらく)なくなりはしませんし、”この領域”を指すこれ以上分かりやすい書き方もないので、そのまま利用します。
また残念ながら(?)今回もまだ日本国内の話が多い点もあらかじめご了承ください。良くも悪くも、2022年にはこの領域での黒船は来港しておらず、また逆に出航した船も少ないという印象です。ただ今年以降、来港しそうな船の影は水平線上にチラホラ……。
ともあれ、本記事内で特に注意書きがない限りは、日本国内の話としてお読みください。
2022年女性向けアプリ市場総括 ~良くも悪くも安定
良く言えば安定しているものの、新しい話題にはちょっと物足りなかった年、というのが多くの方の印象ではないでしょうか。たとえばアプリストアのセールスランキング上位陣は、少なくともこの領域に限っては大きく代わり映えがありませんでした。
一昨年から引き続き「あんさんぶるスターズ!!Music」が1年を通じて圧倒的に強く、「ディズニー ツイステッドワンダーランド」もまだまだ強さを見せています。
アクティブユーザー数(以下、AU)はどうかというと、こちらはもっと如実な結果が出ています。ゲームエイジ総研が発表したモバイルゲームの「2022年女性アクティブユーザーランキング」を見ると、例年とあまり代わり映えがない顔ぶれという意味では同様。明確な女性向けでは「ディズニー ツイステッドワンダーランド」「刀剣乱舞ONLINE Pocket」が今もベスト10入りしている一方、2022年の新作は1本も入っていませんでした。
さらに、同発表内にある「2022年新作アプリ」だけのランキングを見ると、女性AUの”少なさ”が目立ちます。新作アプリの男性AUのランキングでは、10位の「コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ」でも38.3万人なのに対して、女性側は1位の「BTS Island:インザソム」で、やっと34.1万人。
ちょっと電卓を叩いてみます。2022年アプリ全体での男性AUの10位までの合計値と、同女性AUの比率はおよそ5:4なのに対し、新作だけだとなんとおよそ3:1に。同発表にあるように「2022年は女性を引きつける新作アプリが少なかった」というのは間違いないでしょう。
また、広義での「男性向け」の根強い強さも感じます。新作だけの男性AUランキングの上位1~3位は、それぞれ100万前後ものAUにもかかわらず、女性側のランキングでは10位以内に入っていません(⇒10位の「ミラクルマッチ」が14.8万AUなので、それより低い)。
全体、新作どちらのランキングを見ても、女性側に明確な(=狭義の)「女性向け」は少なく、その点では境界線は曖昧になりつつあるといえそうですが、その一方、(広義の)「男性向け」はまだまだ強そうです。
もちろん「女性向け」に目立った新作がないわけではなく、「夢職人と忘れじの黒い妖精」はリリース以降毎月のようにセールスランキング100位以内に入ってきていますし、(女性向けと言い切っていいかは悩みますが)新作の女性AUで1位だった「BTS Island:インザソム」も同様。さらに、年末にリリースされたばかりの「きらめきパラダイス」がよいスタートを切っており、今後も楽しみです。
2022年はサービス終了や障害系のネガティブな話題もチラホラありましたが、全体的には、良くも悪くも安定した年だったといえるでしょう。
今後の展望 ~プラットフォームの垣根も曖昧に
では、2023年以降はどうなっていくでしょうか。
ひとつヒントになると思っているのが、(PlayStation Portable、PS VITAで隆盛しつつもそれらプラットフォームの終焉と共にやや落ち込んでいた)コンシューマの女性向け市場自体が、少しずつまた活気づいてきているということ。
2022年11月に開催されたアニメイトガールズフェスティバル2022(AGF2022)を取材した”しおにく”氏も「推さ日記」第4回で触れていましたが、今回、かなりNintendo Switchが存在感を増していたように感じます。
本稿は「女性向けアプリ市場」の振り返りというテーマなのでここはサラッと触れる程度にしておきますが、2022年には「My9Swallows TOPSTARS LEAGUE」「文字化化」「今夜、イケメンが殺される乙女ゲーム」等々、アプリ以外の「ゲーム」でもいろいろと(いわゆる”乙女ゲーム層”以外にも)話題になるニュースがいくつか見られました。
話をアプリに戻すと、2022年のゲーム・アプリ市場を語るうえで欠かせない「マルチ・クロスプラットフォーム化」の流れが、女性向けにやってくるのも時間の問題かもしれません。
一気に入れ替わるというわけではないでしょうが、マルチプラットフォーム対応ゲームが目立ってくる、と予想しています。
「原神」やバトロワ系をはじめとするマルチ・クロスプラットフォーム対応の人気ゲームはすでに女性ユーザーを多く抱えていますし、人気アプリ「イケメン戦国」「アイ★チュウ」もそれぞれ2022年にSwitch版がリリースされています(前者はPS VITA版の移植)。
また、2022年に発表されて大きな話題となった「結合男子」は、Switch、iOS、Android向けにそれぞれ年内にリリース予定です。海外勢に目を向けると、ニキシリーズでお馴染みのPapergamesがやはり昨年発表した「インフィニティニキ」が、PlayStation 4/5、PC、そしてiOS、Androidに対応予定です。後者は(やはりゲーム業界全体の潮流である)オープンワールドということでも話題になっており、まさに「黒船」としての風格は十分。
女性も(男性も)変わらず普通にPC、コンシューマ機、スマホを使い分けるようになってきた状況では、アプリだけ、コンシューマだけで大きなヒットを生むより、最初から複数のプラットフォームでの展開を考えるという会社が増えてくる……かもという予想でした。
そんなわけで、来年は、「女性向けアプリ」ではなく、「女性向けゲーム市場」を振り返ることを予告しつつ、本稿の締めといたします。
Text by 岩濱@5次元
◆株式会社 5次元について
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