連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第1話

当落画面が真っ白になった瞬間、私の推し活は開戦した――最初から心臓が持たない

落選。
 その二文字が表示された瞬間、車内の音がいっせいに牙をむいた。吊り革のきしみ、靴底の擦れる音、誰かの笑い声。全部が私の耳の奥に突き刺さって、呼吸が浅くなる。

 スマホの画面は明るすぎて、白い。TicketLotの当落ページが、真冬の蛍光灯みたいに眩しい。私は親指で何度も更新して、何度も同じ結果を見た。落選。落選。落選。

「……はは」

 笑えたふりをして、失敗した。喉がひゅっと鳴って、胸の奥がきゅうっと縮む。隣の人の香水が濃い。背中のリュックが押してくる。私は足元を見つめ、耳栓ケースを握りしめた。私は人混みの音が刺さりやすくて、現場でも移動中でも、耳栓は“最後の切り札”だ。
 でも、使うのはまだ早い気がして、指が止まる。耳を塞ぐとアナウンスが聞き取りにくくなるし、推しの声が遠のくのが怖い。周りに『大げさ』だと思われたくない、という変な意地もある。

 駅に着く頃には、心臓が普段の倍の速さで働いていた。改札を抜ける。人の波に押される。私は最前列に立てない。推しのことが好きなのに、好きな場所に辿り着けない。その事実が、今日も私を小さくする。

 家に帰り、靴も脱ぎきらないままMurmurを開いた。

 私のMurmurの表示名は、hiyori-note。仕事で校正をしているから、短いメモみたいな名前にした。

 タイムラインは、同じ二文字で埋まっていた。
「当選」
「落選」
「当選! 泣いた!」
「落選……もう無理……」

 胸がざわつく。私だけじゃない。救われる、はずなのに、逆に息が詰まる。言葉が多い。感情が多い。画面から音が出ていないのに、耳が痛い。

 私は指を止めた。何か書いた方がいい? 書かなくていい? でも、何かを言わないと置いていかれる気がする。自分が、透明になる気がする。

 ……私は、短く打った。

「落選。でも、宵玻璃(よいは)の歌は今日も残ってる。生き延びる」

 送信。すぐに、通知が増えた。
誰かがRPした。誰かが引用した。

 引用の文面は、丁寧な口調だった。
「“生き延びる”とか大げさ。空気読んで。今は当選した人を祝う流れですよね?」

 私の指が冷たくなる。言い返せない。訂正もできない。画面の中で、私の言葉だけが浮いて、針みたいに刺さっている。

 通知がまた鳴った。引用が増える。知らない人の“正しさ”が積み上がる。胸の奥がざわついて、呼吸がさらに浅くなる。
 ここで倒れたら、何も守れない。私は耳栓を取り出し、やっと耳に入れた。世界が少しだけ遠のく。でも、画面の白さは遠のかない。

 そして、DMのアイコンが赤く光った。
見知らぬアカウント。名前も、アイコンも、記号みたいだった。

「あなた、邪魔。動くな。」

 私は削除ボタンに指を置いた。
押せば、何も見えなくなる。
でも、押したら――私は、ほんとに透明になる。

 指が、動かない。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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