連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第13話

悪役になりたくない大人がいる――私たちは敵を間違える

「推しの投稿が消えた」その夜の空気を、私はまだ耳の奥に持っている。
 音じゃない。視線と推測の熱。タイムラインの速度。正義が増えるほど、息が減る。

 翌日。昨夜の余韻がまだ残る朝、さやが短く告げた。
「会う。条件を詰める。推測じゃなく、線で動く」
 ミレイが即反応する。
「うん。ひより、一人で背負うの禁止。現場も会うのも、分担!」

 私たちは、榊さんから指定された場所――駅から少し離れた、明るい喫茶店の入口に集まった。
 人通りはある。逃げ道もある。私は耳栓を片耳に入れ、水を握って、椅子に座る。息を数える。

 約束の時間ぴったりに来た。
 相変わらず疲れた目。相変わらず名札はない。
 でも、今日は最初に頭を下げた。

「……ごめんなさい。本当に。悪役になりたいわけじゃないのに、悪役みたいな言い方しかできない」
 その一言で、私の中の“公式=硬い壁”が少しだけ崩れた。悪役。そう言える人は、たぶん本物の悪役じゃない。

 さやが、真正面から短く聞く。
「条件。何を守れば、何が残る」
 榊さんはテーブルの上に、何もない手を置いた。武器も盾も持っていない手。

「守ってほしい線は四つ。攻撃をしない。個人を晒さない。憶測を断定しない。現場で騒がない」
「……それは、守れる」
 私の声は小さい。でも言葉は揺れなかった。私たちは、すでにその線を引いていた。

 榊さんは息を吐き、続ける。
「その代わり……言葉は届く道を残す。本人宛のものは、受け取れる。配布はダメ。拡散もダメ。――一冊だけ、本人に渡せる形なら」
「一冊だけ」
ミレイが反射で打ちそうな勢いを、口で出した。
「マジで? それなら、ファン冊子いける!」

 榊さんは苦笑いをした。
「いける。……ただし、締切がある。現場まで、時間がない」
 私の胸が跳ねる。現場。最後の砦。そこへ向けて、私たちは今、走っている。

 私は言った。
「本人は……続けたい、って言ってましたよね」
 榊さんの目が一瞬だけ揺れた。
「……言える範囲。そう。続けたい。でも、守らなきゃいけないものもある」
 守るもの。推しの安全。生活。契約。ここで詳細に踏み込むと危ない。私は喉の奥で線を引く。

 さやが言う。
「私たちは、敵を間違えない。ファン同士で殴り合わない。運用で守る」
 榊さんが小さく頷いた。
「それが、いちばん助かる。……あなたたちみたいな人がいると、世界が少しだけマシになる」

 世界がマシになる。
 その言葉が、私の胸の奥に残った。推し活は、好きのためだけじゃなく、世界を少しだけマシにする練習なのかもしれない。

 榊さんは最後に言った。
「印刷物なら、本人が受け取れる形にして。ロゴや写真は使わない。個人情報は絶対に入れない。……それから、あなた」
 榊さんの視線が私に止まる。
「あなたの文章、火に油を注がない。だから、お願い。最後まで、燃料にならないで」

 燃料にならない。

 店を出た瞬間、ミレイが私の袖を引く。
「ひより、作るよ。最高の一冊」
 さやが短く続ける。
「締切を切る。今から作業」

 私のスマホが震えた。
 印刷所のサイト。締切表示。
「入稿:48時間以内」

 48時間。
 心臓がまた別の音を出した。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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