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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第3回 ベテランなのに猛勉強!? 苦手ジャンルに挑め!

1.ゲームシナリオライターは万能であるべし!

ゲームシナリオライター歴15年。
世の中に出た作品数は100本を超える。
その100本は当然、作品ごとにテーマやジャンル、キャラクターが異なっている。

例えば、
「高校生」「大学生」「オフィス」「スポ―ツ」「王子様」「アイドル」「ミュージカル」「ファンタジー」「SF」「歴史」「アンドロイド」「ホスト」「義兄弟」「妖怪」「海賊」「錬金術」「童話」「タイムスリップ」「擬人化」――

などなど。キーワードをあげればきりがないのだが、今思い出せるだけでもこれだけの世界観・テーマの作品に携わってきた。

近年のゲーム、特に乙女ゲームではこの世界観・テーマが細分化されてきている。
黎明期である90年代を振り返ると、そもそもまだ作品数自体が少ないこともあり、大抵は「現代(学園)」か「ファンタジー」のどちらかだった。
そこから少しずつ、「過去(歴史)」「未来(SF)」「現代(社会人)」……とテーマの幅が広がっていったように思う。

そして現在。
かつては「学園モノ」だけですべての説明ができていたカテゴリも、一言で語り切れなくなっている。
私立なのか公立なのか、田舎なのか都会なのか、寮があるのかないのか、ブレザーなのかガクランなのか、共学なのか男子校なのか、現代なのかファンタジーなのか、生徒は人間なのか獣人なのか、アイドル育成なのか、戦闘はあるのかないのか、攻略対象は多いのか少ないのか、主人公は生徒なのか教師なのか……etc…
ユーザーが期待し求める「学園モノ」は、さらに様々な萌え要素が複雑に絡み合って成り立っているのである(ちなみに私は今でも、「学園モノ」と言われると『ときめきメモリアル』シリーズが思い浮かぶのだが、皆様はいかがだろうか?)。

ゲームジャンルも、「ジャンル:恋愛学園ADV」ではなく、「ジャンル:100匹のモフモフに溺愛されて世界を救っちゃうADV」みたいにラノベのタイトルのように表記されることが増えてきた。

そう、もはや「恋愛学園ADV」だけでは作品を説明しきれず、その作品だけのジャンル・カテゴリが生まれているのだ。

……と、少し話がそれてしまったが。
前回も話したように、どんな世界観でもテーマでも、求められた色に染め上げるのがゲームシナリオライターのお仕事である。

つまり、
ゲームシナリオライターは「万能」でなければならない。

私の生徒達にも、「ゲームシナリオライターになりたいのなら、どんなジャンルでも書けるようになるべし!」と口を酸っぱくして話している。

……だが。人間には好き嫌いがあるように。趣味嗜好性癖があるように。
様々な時代と場所と世界で、主人公とイケメンをイチャイチャさせてきた私にも、苦手なジャンルがある。

それが「SF」「歴史」「大人の世界」だ。
……なぜなら、『重くて暗くて難しい話が苦手』だから。

生徒達に「ゲームシナリオライターは万能であるべし!」と言っておきながら、その先生の実態がこれである(生徒達がこの記事を読んでいないことを祈る)。

しかし、推しノベルのメインライターとして『B.I.N.D.(バインド)』(以下、『バインド』)の色付けを任された以上、「苦手なのでできません」とは口が裂けても言えない。     いや、プロとして言いたくはない。

この15年の間も数々の苦手を克服してきて、今がある。
苦手は、努力とテクニックで補えることも知っている。

――さあ、見せてあげましょう。これがプロの力です!!

苦手ジャンルを乗り越える方法とは……!?

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