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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第4回 小学生なのにガチ恋!? 初恋相手は守護聖様!!

2.ゲームの中でも恋はできる!

世界初の女性向け恋愛ゲームといわれる、『アンジェリーク』。
乙女ゲーム業界に、この名前を知らない者はいないだろう。
発売から現在まで、多くの女性ファンに愛され続けてきた、乙女ゲームの偉大な一歩であり、同時に金字塔でもある。

アンジェリークを知らない方のために、簡単にあらすじを紹介しておこう。
宇宙を統べる女王候補に選ばれた主人公とライバルが、宇宙と女王を守る使命を背負った『守護聖』と呼ばれる9人のイケメン達の力を借りて、惑星を育成するというファンタジックなストーリーだ。守護聖と交流していくうちに恋心が芽生え、主人公(プレイヤー)は「使命」か「恋」かで悩むことになる。

それまでの私にとって、ゲーム世界での主人公は「走る」「ジャンプ」「戦う」が当たり前だった。
だが、『アンジェリーク』はどうだろうか。
ジャンプしてキノコ型の何かをつぶすことはないし、剣を振り回したり、魔法を唱えたりもしない。
彼女がやることといえば、かっこいい男性達との「恋」なのだ。

当時の私は小学校高学年。ちょうど恋愛ごとに興味を抱き始める年頃だった。
そんな私が、9人のイケメン達に心を奪われないはずがない。
姉のプレイをそばで見るだけでは我慢ができず、夜中にこっそり起きて守護聖様に会いに行くほど、私は彼らにハマっていた。

……そう。もはやこれは、恋だ
小学生にして、私はゲームのイケメン達に恋をしてしまったのである。

『アンジェリーク』との出会いをきっかけに、私にとってゲームは「恋」をするためのものになった。
日常生活では味わうことのできない、ときめきや興奮を、ゲームの中に求めるようになったのだ。

中学・高校と、その勢いはとどまることを知らず。
「乙女ゲーム」「恋愛ゲーム」と名の付く作品や、少しでも恋愛要素があるものは手当たり次第に買い集めていた頃があった。
その中でも、『ときめきメモリアル』『遙かなる時空の中で』『金色のコルダ』『悠久幻想曲』『牧場物語』『サクラ大戦』『プリンセスメーカー』は、朝から晩までやり込んだ記憶がある。

漫画、小説、ドラマ、アニメよりも、ゲームの中で繰り広げられる恋愛模様になぜか強く惹かれた。
おそらくそこには、「自分自身が主人公になって物語を作っていく」楽しさがあったからだろう。この楽しさだけは、他の媒体では味わえない。
自分の行動ひとつで運命が変わる。プレイするたび、違うキャラクターとの恋愛が楽しめる。
たとえ失敗したとしても、次に困難を乗り越えた時の達成感が、ゲームにはあったのだ。
あの時に感じた、感動もトキメキも恋心も、まだ私の中に残っている。

しかし、それだけの数の乙女ゲームをプレイしていると、どうしても「物足りない作品」に出会ってしまうことがある。
そんな時は必ず「私ならこうするのに」という考えが浮かんできた。
その考えは少しずつ形になり、ノートにアイデアをまとめるようになった。
「いつか自分でも乙女ゲームを作ってみたい」。小さいけれど確かな夢が私の中にあった。

そんな私の思いが決定づけられたのは、またもや姉がきっかけだった。

姉「自分でゲームをつくれるソフトがあるよ」

その一言をきっかけに、私はプレイヤーからクリエイターに変わったのだ。

イラスト、シナリオ、プログラム。
どれも手探りだったが、毎日少しずつ作り続けて、初めてオリジナルの乙女ゲームを作った。

自分の頭の中にしかなかったものが形になる。
他人に、自分の作ったゲームを遊んでもらえる。
「面白かったよ」と言ってもらえた時、今まで感じたことのないような喜びを覚えた。

それからはもう。
何をしていても、どこにいても、誰と話していても。乙女ゲームのことばかり考えていた。
どんな世界で、どんなキャラで、どんなシステムで、どんな恋愛をしよう。
365日、考えない日はなかったと思う。

もうこの頃には、自分の手で「最高の乙女ゲーム」を世の中に生み出したいと強く思っていた。

あの日、姉が友達から『アンジェリーク』を借りていなければ。
私にとって、ゲームはただの遊びで終わっていたかもしれない。
人生とは、何がきっかけで変わるか分からないものである。

今の乙女ゲームに物申す!? あの頃の乙女ゲームをもう一度!

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