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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第5回 乙女ゲームなのに女性キャラにこだわる!? 乙女ゲームのキモは主人公!

1. そのゲームは誰が為に

推しノベル『B.I.N.D.』(バインド)の企画会議に参加してから数か月も過ぎると、シナリオを書くために必要な設定や資料がだいぶ揃ってきた。
ゲームの舞台設定、デザインの方向性、各種固有名詞、ゲームシステム、シナリオ構成等々……。
皆でアイデアを練り上げ、世界を少しずつ形作ってきたのだが、やはり乙女ゲームにおいて一番重要なファクターは『キャラクター』だと思う。

恋のお相手となるキャラクターが「乙女心」に刺さらなければなんの意味もない。
そもそも「このキャラと恋をしたい!」と思えないゲームに手を出すだろうか。

だが、当然世界中のすべての女性(ないし恋愛対象が「男性」の人)が恋に落ちるようなキャラを生み出すのは無理だろう。人にはそれぞれ好みというものがあり、ゲームを企画する側も「ターゲットユーザー」を企画の段階で決める必要がある。

例えば、メインとなるターゲットユーザーが小学生の女子だったとして。
「禁断のオフィスラブ・冷酷眼鏡上司と俺様社長に溺愛されるADV」というテーマ、謳い文句のゲームはさすがにありえない。同様に20代のオトナ女性をメインターゲットにした場合に「今日から小学1年生! みんなと仲良くできるかな? どきどきのスクールADV」というテーマ、謳い文句のゲームは、やはりありえないだろう。
(※私のようなショタ好きには一部需要があるかもしれないが、それはまた別である)

つまり、どんな作品においても「誰に向けたものなのか」というのを、しっかり考えておく必要がある。

バインドの場合は、SF・シリアス・監獄・看守・オトナの女性向けというキーワードが決まっている。ここに舞台設定も合わせて考えていけば、おのずとキャラクターの方向性も見えてくる。

バインドにおいて必要なキャラクターは3人。
主人公(ヒロイン)・ヒーロー1・ヒーロー2だ。

大抵の場合、私達シナリオライターに仕事の依頼が来るのは「世界設定・プロット・キャラクター」がすでに決まったあとなのだが、前回までにお伝えしたように、今回のプロジェクトでは企画の初期からジョインしている。

で、企画会議で、キャラクター達を決めることになったのだが。

(主に女性の)メンバーが燃えに萌えた。
己の性癖をぶつけあう、譲れない戦いが始まったのである。

→キャラクターの魅力は属性で語れ! 大事なのはヒーローだけじゃない!

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