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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第5回 乙女ゲームなのに女性キャラにこだわる!? 乙女ゲームのキモは主人公!

2. 主人公もヒーローも魅力的であれ!

私が乙女ゲームのキャラクターを考えるときに、ポイントにしていることがある。
それは「一言属性」。長々とキャラクターを語るのではなく、まずは登場キャラクター達を「一言属性」ではっきりと区別するのだ。

たとえば、「ツンデレ」「クール」「ヤンチャ」「元気」「小悪魔」などだ。
もちろんここにも、先ほど話したターゲットユーザーの趣味嗜好が含まれる。 ただ、いろんな属性のキャラを作ればいいというものでもない。

そのキャラクターが、世界観にあっているか。物語を動かすうえで適切か。一番重要な恋愛部分でユーザーの喜ぶようなシチュエーションを描けるのか、等々……いろいろと考えなければいけないことがたくさんある。

バインドのメインターゲットは、20~30代の女性。それも全世界の。
そして舞台は刑務所。オトナ向けのシリアス展開とアダルティーな恋愛模様が予想される。

乙女ゲーム好きのスタッフで、あれこれと意見やアイデアをぶつけ合った結果、ヒーローの二人は意外と早く決まったように思う。

ヒーロー1:死刑囚レイン→わんこ系
ヒーロー2:先輩看守シエロ→冷酷系

どんな「わんこ系」なのか、どの程度の「冷酷系」なのか。
当然、細かく話し合いが繰り返されたが、このあたりについてはあまり迷いがなかった。
(※メンバー内ではシエロ推しが多かったが、私はレイン推しである)

だが、主人公であるローザ。彼女については、頭を悩ませた。

2000年代初期。携帯乙女ゲームがはやりだした頃。
求められる主人公は「無個性」だったと記憶している。プレイヤーの分身である主人公は能動的ではなく、基本受け身。攻略対象から常に守られ、助けられ、支えられるような立場だった。
おそらく、携帯電話(いわゆるガラケー)という媒体においてゲーム画面に「主人公の顔が出ない」というのも一つの要因だったように思える。顔がない=印象がないということだ。
つまりユーザーが見ているのはイケメンだけで、主人公は物語の進行役に過ぎない。そこに個性など求められていなかった。あくまでもプレイヤー自身が主人公なのだ。

しかし、携帯電話はスマホに進化し表現できる幅が増えた。
当然コンシューマーでも数々の乙女ゲームが世に生み出され、主人公の顔がしっかりと描かれる作品も出てきた。守られていたはずのヒロインが、今度はイケメンを守ったり、助けたり、支えたりするようになっていったのだ。
だが、逆に「個性が強すぎて嫌われる主人公」というのも出てくる。
乙女ゲームシナリオライターを目指している方がいたら、次の言葉を胸に刻んでほしい。

「主人公がプレイヤーに嫌われたら終わり」。

「恋したい!」と思うイケメンがいても、主人公が気に入らなければ最後までプレイはしない。誰でも、自分の嫌いな女が自分の好きな男とイチャイチャしているところは見たくないだろう。

乙女ゲームというと、つい攻略対象のイケメンのほうに意識が行きがちだが、主人公のこともしっかりと丁寧に作り上げていってほしい。

→乙女ゲームの主人公は2パータン! あなたはどっち派?

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