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しおにくが綴る「推さ日記」第2回:譲れない想い、譲れないデータ(推し活×NFT・SBT)


胡散臭いことでお馴染み?のNFT。「お金の臭い」がする時点で、ゲーム……特にキャラを愛でたり推したりするタイプのゲームとは相性が悪いと思う方も多いとか。確かに、推しへの愛の深さを札束の厚さで競うって、なんかおかしいですよね。そこで、SBTです。簡単に言えば、他者に譲渡できないNFT。当然売買もできないから、お金の臭いがしないわけです。これはネタとして面白いかも……と、今回もまたしおにく氏に無茶振りしてみた次第。

今回のお題は最先端の痛バッグ?

 連載の2回目でいきなり変化球を投げろと言われるとは思わなかったのですが、今回取り上げるのは「Soulboundトークン」(SBT)という話題の概念です。良くも悪くも有名になってきたNFTの一形態といえるのですが、これがいずれ皆さんの「推し」を明確にする、推し界の実績解除、トロフィーの役割を持っていくという話です。

 筆者は『NFTゲーム・ブロックチェーンゲームの法制』(商事法務・刊)というめちゃめちゃ堅い本を書いていて、あまりに専門書すぎて普通の書店には置いていないという淋しさを感じています。流行りのジャンルなのに!

 そんなわけで、「私は誰を推し、何を推していて、どんな行動からどんな属性を持っているのか」それを白日の下に晒す、最先端の痛バッグともいえる「Sounboundトークン」。これについて取り上げてみたいと思います。

デジタルデータは画期的……だった!

 いやぁ、NFTって胡散臭いッスね! 無理して使わなくていいブロックチェーン技術を何かに使えるのではないかと真面目に開発や実装をしている人々を尻目に、いまだに一体何の権利を行使できるものかも分からないデータをNFTとして売っているケースを目にします。

 今回はSoulboundトークンを「推しの証」として使おうという話なのですが、そもそもNFTもよく分からないという人のために、まず解説をします。

 現代的なデジタルデータが世に登場して50年以上経っているわけですが、最も画期的だったことは何かに想いを馳せてください。それはデジタルデータが「コピーし放題」だった点です。

 もちろん質量保存の法則からいって、データを入れた物理メディアがポコンと物理的に増えるわけではありません。紙のコピー機が読み取った白黒の情報を、「新しい紙にトナーを吹き付けて作る」ものであるのと同様ですね。そのものは複製されない。

 デジタルデータも、メディアAに記録された「0」や「1」の信号の並びを、メディアBにも同様に記録することで、相当のものを作る。これがコピーの正体です。

 物理メディアでなくても、東京のコンピューターとニューヨークのコンピューターをネットワークで結び、長距離間でもコピーを作ることができます。
 電子メールやメッセージを「送る」と言いますが、それは手紙のメタファーであって、実際は相手先にコピーを作っているだけです。
 遠方にコピーを作り、手元のデータを消せば、コピー先へと「移動」したようにも見えますね。

 昔懐かしMS-DOS(「Windows」の前身となるOS)の基本コマンドは「copy」です。新たなファイルを作成する際も、ちょちょいとマウス操作でコマンドを実行するのではなく(⇒GUIではなく)、「copy CON ファイル名」とキーボード(コンソール)から入力してファイルへ「コピー」という概念で誕生させていました。

 このように、現代的なデジタルデータは「コピー」と切っても切り離せないものとなっています。

 デジタルデータの世界は「コピー」という画期的な機能をもって発展しましたが、半面、困ったことも起こりました。カジュアルコピーによる権利侵害や、原本がどれか分からなくなる問題です。現実世界と違って、完全な複製は原本と呼んでしまっても差し支えないからです。

 物理メディアが重宝されていた時代は、ソフトウェアのカジュアルコピーを防止するためにコピープロテクトを実装するなどが有効でしたが、現在ではコピー対策としてシリアルナンバーを用いたり、正規アカウント所持者によるサーバー照合などでライセンス所有の正当性を確認するものがほとんどです。

 そして、10年ほど前にブロックチェーン技術が誕生しました。これは簡単にいうと、データが移転したり書き換わる度にそのことが履歴として残り続けるというもので、この履歴が改ざんされないのは、基盤となるブロックチェーンネットワーク上で世界中のコンピュータ(ノードと呼ばれる)が演算して検証しているからです。

 ブロックチェーン技術の利用例として最たるものが暗号資産です。ビットコインやイーサリアム等の名前を聞いたことがあると思いますが、相場が形成されるや否や大ヒットとなり、数年前に取引で儲けた人が「億り人」なんて呼ばれたのを覚えている人もいると思います。

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