
1. 物語を書くために必要な資料は事前にすべて揃っているものである
シナリオライターは「縁の下の力持ち」。
自分ではない誰かの作品を、形づくるお手伝いをする。
第1回でゲームシナリオライターの在り方について熱く語らせてもらったが、もう少し具体的な仕事内容について話しておきたい。
ゲームシナリオライターと一言で言っても、会社専属から私のようなフリーランスまでおり、そのスタイルは様々で仕事内容も多岐にわたる。
そのため「ゲームシナリオライターの仕事はこうだ!」と強くは言い切れないのだが、15年も書き続けていると、ある程度のパターンが見えてくる。
今回は、よくあるお仕事のパターンを2つ紹介しよう。
~パターン1~
企業側から「こういうものが作りたいんです」と、企画書&キャラクター設定&あらすじがセットになった資料が送られてくる。
シナリオライターは、その資料を読み込んで「プロット」(結末まで書かれた物語の流れ)を作成。その後、「プロット」を元に「シナリオ」を書き起こす。
~パターン2~
企業側から「こういうものが作りたいんです」と、企画書&キャラクター設定&あらすじ&プロットがセットになった資料が送られてくる。
シナリオライターは、その資料を読み込んで「プロット」を元に「シナリオ」を書き起こす。
***
上記2パターンの違いはプロットがあるかないかだが、シナリオライターからすると、かなり大きな違いとなる。しかし、今話したいのはここではない。
注目してほしいのは「物語を書くために必要な資料は事前に用意されている」ことである。
それもそのはず。
企業側はすでに、「どういう商品(作品)を売り出すのか決めている」からだ。
内部で決まった企画は資料化され、イラストレーターやシナリオライター等の外部クリエイターに渡される。
その資料を元に、クリエイター達は作品を色付けるお手伝いをしていくわけだ。
今回、5次元というゲーム会社さんから新規プロジェクトにお誘いいただいた時も、私はシナリオライターとしてお手伝いする気満々だった。
「企画書・キャラクター設定・あらすじ」の毎度おなじみ資料セットが、いつ来てもいいようにと待ち構えていたのだが――
なんと最初の打ち合わせ時点で、まったくのゼロと判明(!?)。
舞台設定も、キャラクターも、あらすじも、決まっていない。
決まっているのは「推しノベル」というシリーズタイトルだけ。
そうなると普通、シナリオライターに話が来るのは数ヶ月後だったりするはず。にもかかわらず、このタイミングでオンライン会議に参加することになったのだが。
5次元スタッフ「何を作るのかみんなで決めよう!」

……なにをつくるのか、みんなできめよう???
縁の下の力持ち。
お手伝い。
影からひっそり。
私が前回の記事で熱く語ったゲームシナリオライターとしての在り方が、全部すっ飛んでいった瞬間であった。
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みんなで決める企画会議とは!?