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「ゲームシナリオライターなのに、ゲーム作りに参加してしまった件」第2回 ゲームシナリオライターなのに、企画会議に参加しちゃった!?

3.『B.I.N.D.』誕生の瞬間

ゲームシナリオライターを15年もやっていれば、企画立案に関わったことも何度かある。その際に企業側からは「こういうものがいい」とある程度のネタが提供されるものだ。
そのネタを元に数本企画書を上げるのだが、それを商品として世に出すかどうか判断するのは当然、企業側だ。その判断する場に、外部のゲームシナリオライターが同席することは、ほぼないだろう。私達の役割は物語を作ることであって、「商品を決める」ことではないのだから。

今回のように初期段階からプロジェクトメンバーが集まり(しかも外部のメンバー含む)、意見を出し合う企画会議なんて、私の経験上ありえない。
しかも「基準からみんなで決めて、それに当てはまるかどうか」で決めるなんて――

面白い。
なにこれ! 面白すぎる!!
こんな企画の決め方、初めて!!!

私の緊張は、いつの間にかワクワクとした好奇心と興味に変わっていた。

話し合いで選ばれた基準は、以下の4つだ。

1.海外でも通じる
2.魅力的な恋愛要素(セクシーさ、トキメキ)
3.斬新さ・目新しさ
4.世界観の深堀ができる

この4項目に当てはまるものを選び、投票数の多かった企画案を取りまとめて、再度企画を練り上げるとのこと。

私個人の好みで言えば、好きなのは「現代」「ファンタジー」「擬人化」なのだが、この項目に当てはまるものとなると話は違う。

投票後、選ばれたのは――

看守と囚人モノ、近未来モノ。

の2企画だった。

すでに『B.I.N.D.』をプレイされた方ならピンと来たのではないだろうか。
この2つの企画が、ひとつになった結果『B.I.N.D.』が生まれたのだ。

こうして無事に、推しノベル第1作のテーマが決定。
「看守と囚人」「近未来」――このネタを元に、世界観やキャラクター設定、あらすじを考えることになった。

企画会議ではなんの爪痕も残せなかった、私。
だが、ストーリー作りとなれば話は別である。
そう! ゲームシナリオライターは物語作りのプロフェッショナル!

泉「ここから私の本領発揮ですね!! 任せてください!」

ドーンと強く胸を叩いてみせたが……内心、滝のような汗が止まらない。

・看守と囚人→アダルトでダークでシリアスな雰囲気確定
・近未来→難しい単語や設定、複雑な世界観確定

そのどちらも。
私の苦手とするジャンルだったのだ。

やばいやばいやばいやばい!!
爪痕残すどころか、プロジェクトメンバーから外される!!!

⇒次回「プロなのに役立たず!? 苦手ジャンルに決まっちゃってどうしよう!!」(仮)へ続く

文・イラスト/泉りお

※当連載の第3回は、8月4日(木)頃に掲載予定です

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