連載 ゲーム

しおにくが綴る「推さ日記」第4回:『推しキャラはコンテンツかアイドルか?』(AGFの変化から想うキャラ推しの今後)

VTuberって何がすごいの?

 ちょっとここで昨今のVTuber市況のおさらいをします。推し系ビジネス界隈がなぜVTuberたちの躍進から目が離せないかというと、今年6月に「にじさんじ」の運営元であるANYCOLOR社が東証グロース市場で上場し、時価総額2,000億円をつけたからです。

 途端につまらない話になりましたよね……。上場がどういうことなのかも普段の生活からわかるようなものではないですし、「信頼と実績のあるちゃんとした企業」くらいの意味しか感じられなくて当然です。もう1段落だけお付き合いください!

 芸能事務所単体での上場は珍しいことで、東証プライム市場で「アミューズ」「エイベックス」が、YouTuber事務所だと東証グロース市場で「UUUM(ヒカキン氏などが所属)」がそれぞれ上場しています。「吉本興業」や「ホリプロ」が上場を取りやめたのが10年以上前になりますので、これだけ様々なメディアで芸能人、YouTuber、VTuberが活躍しているのに4社だけということになります。ということで上場に関する話題はここまで。

 さらっと、VTuber事務所を「芸能事務所」ジャンルにくくってしまいましたが、身も蓋もない言い方をすれば「覆面芸能人ばかりを抱える芸能事務所」です。裏を返せば、VTuberというツールを得たことで、肉体や相貌による身体的・社会的束縛から解き放たれた逸材が陽の目を見るようになれたとも言えます。

 これはアバターを用いたメタバースでの活動が、人を身体的・社会的、さらには地理による束縛から解き放ったのにも似ています。

 VTuberは芸能人の真似事をCGアニメ操作者がやっているのではなく、旧来のメディアでカバーしきれなかった個性が発掘され、ターゲットの嗜好やプロジェクトのテーマを体現した姿をまとい、インターネット、スマホ・PCといった興行とマネタイズが一体となったメディアで展開されている。これはとても画期的なことです。

 VTuberは何人くらいいるかと検索すると、この世に20,000人ほど存在するようです(2022年11月現在)。10月の段階では16,000人と言われていたので、大ブームと言ってもいいでしょう。もちろん群雄割拠の世ではありますから、人知れず引退したり、転生(現在のVTuberの姿を捨て、中の人=魂が別の姿で出直すこと)したりしながら栄枯盛衰していくのだと思います。

 AGFに話を戻しますと、さきほどのANYCOLOR社が運営する「にじさんじ」とカバー社が運営する「ホロライブ」が出展していました。ホロライブは「ホロスターズ」のグッズを2020年に物販し、それ以降毎年出展しています。にじさんじは筆者の知る限り今年が初めてだと思われます。

 初期のVTuber「キズナアイ」が最初の動画をアップしてから6年。この間にVTuberは多種多様に広がり、使用されるCG技術もゲーム開発でおなじみのUnityやノベルゲームでの立ち絵で親しみのあるLive2Dが広く使われるなどの拡大をしてきました。
 これまでアニメやゲームのキャラクターを中心としていた言わば「池袋系」の界隈にも、推し活の対象として当然のように食い込んできているのがVTuberと言えます。

1 2 3 4
RELATED POST