
同担を嫌いになりたくない――でも境界線は引く
「怖かった」
ユズの声は、思っていたより小さかった。正しさの声じゃない。弱さの声。
ユズは笑顔を作ろうとして、失敗したみたいに口元が歪んだ。
「私が守らないと、って思ってた。私がちゃんとしてないと、推しが消えるって」
私は息を呑んだ。消える。私も同じ言葉を心の中で使っていた。推しが消える。推しの声が消える。推し活が消える。
ユズは続けた。
「新規が増えて、空気が変わって、私の居場所がなくなるのが……怖かった。だから、正しいって言えば、みんな従うと思った」
正しさは、居場所のための盾だった。
私は胸が痛んだ。痛むのに、許すわけにはいかない。支配は支配だ。攻撃は攻撃だ。線は引く。
私は小さい声で言った。
「怖いなら……攻撃しないで。助けて、って言って」
ユズの目が揺れた。泣きそうな目。
「……言えなかった」
「言えないなら、言葉を借りていい。でも、誰かを刺す言葉は、借りないで」
私の声は小さい。でも、言葉は刺さる。刺すためじゃなく、止めるために。
榊さんが、いつもより柔らかい声で言った。
「もう、やめよう。ここで」
定型文じゃない。榊さんの人間味。疲れた目の奥の、ため息。
さやが短く付け足す。
「境界線。守る。これ以上、現場で揉めない」
ミレイが、珍しく静かに頷いた。
「うん……今は、推しの夜だもん」
推しの夜。
私は胸の奥で、その言葉を抱いた。推しの夜を、戦場にしない。
榊さんが私に小さく頷く。
「受け取った。ちゃんと、渡す」
息を吐いた。胸の奥が少しだけ軽い。
ユズは涙を拭うように瞬きをして、声を絞り出した。
「……ごめん。ひより」
ユズは一度だけ息を吸って、言い直した。
「……ユズ。……本当は、芽吹ユズ。名前くらいは、ちゃんと出す」
私の名前。
初めて、ユズが私を“アカウント”じゃなく、人として呼んだ気がした。
「……私も、怖い。だから、運用する。自分も守る」
ユズは小さく笑って、でもすぐに泣きそうになった。
「私、距離、取る。……ちゃんと」
距離を取る。
それが、救いになることもある。依存じゃなく、共存。推し活の形を、少しだけマシにする。
そのとき、ステージから最後の一曲のイントロが流れた。
会場の空気が、一気に柔らかくなる。怒りも、正しさも、いったん沈む。音が、推しの形に戻る。
私は耳栓を浅くし、息を吸った。
届く。
最前列じゃなくても。
榊さんが小声で言った。
「……聴いて。今日だけは」
答え合わせは、点数じゃない。
今夜は、推しの夜。
「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」
※本作品はAI生成本文を含みます
作者紹介

ヒトカケラ。
好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。
公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel









