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「推さ日記」第5回『親子三代にわたって推されるということ』(『ウルトラ怪獣モンスターファーム』ほか)

ウルトラシリーズを支えてきたのはヒーローではなく怪獣のほう!?

 と、興奮気味に伝えてしまいましたが、ウルトラシリーズにはたくさんの「推し」ポイントがあります。もちろんウルトラヒーロー・ヒロインの面々、個性豊かな怪獣たち、溌溂とした俳優陣、親しみ溢れるボイスでウルトラマンの性格を際立たせてくれる声優、慣れてくると「今回は●●監督だな!」とわかる映像技法、防衛軍のミリタリー要素……etc.どこからハマッてもよい間口の広さがあるんですね。

 とはいえ、普段特撮ヒーローものに触れていない人にとっては、何のこっちゃというジャンルでもあります。おそらく誰でも聞き覚えのある話題としては『シン・ウルトラマン』が挙げられると思います。55年以上前の『ウルトラマン』を、樋口真嗣監督がメガホンをとってリメイクしたもので、印象的な言い回しのセリフや主題歌まで含めて、社会的に大ブームとなりました。

 また、2023年は『ウルトラマンギンガ』から続くニュージェネレーションヒーローズと称され毎年放映されてきたシリーズが満10年を迎え、いわゆる「最近のウルトラマン」にとっても記念の年でもあります。家電店のフェアののぼりにウルトラマンが描かれていたり、各種コラボレーションも盛んです。

 ここ10年のウルトラマンについては、ウルトラマンブレーザーに先だって公開された直前スペシャルの映像にまとめられていますので、こちらも先程の動画とともにご覧ください。いかにウルトラマンブレーザーの第一回がチャレンジングな映像かというのも比較としてわかっていただけると思います。

『ウルトラマンブレーザー直前スペシャル』予告 -公式配信-

 少し歴史の話をします。シン・ウルトラマンのリメイク元である『ウルトラマン』やその前身番組であった『ウルトラQ』の時代は、まさに日本の高度成長期。作品内にニュータウンの造成地が出てきたり、団地が印象的だったり、日常に活気が溢れていたことがうかがえます。

 そして『ウルトラセブン』では怪獣とともに異星人がフィーチャーされ、世界がアポロ計画をはじめとした宇宙への興味を持っていた時代であることが想像できます。

 この時期は「第一次怪獣ブーム」と呼ばれていて、ウルトラシリーズ以外にも、各テレビ局、各映画会社がこぞって怪獣作品を放映、公開していたんです。今では考えられないことですが……。

 当時、日本でテレビの受像機が普及したという背景がありつつ、戦後復興、高度成長、公害問題、交通戦争といった、怪獣になぞらえてもおかしくないほどのエネルギッシュな状況にあったこともあるでしょう。

 時代的に多数の娯楽作品が登場したことにより、一旦は沈静化した怪獣ブームですが、『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA(エース)』『タロウ』『レオ』で再燃します。「第二次怪獣ブーム」は、ベビーブームで子供が多かったことが背景にあり、怪獣の出る特撮だけでなく、仮面ライダーをはじめとした等身大ヒーローものや、アニメ作品も人気となっていきます。少子化対策に政府が躍起になっている現代に比べると、夢のようにも思えますね。

 いまだに「名作」と言われる作品がこの頃に多いのは、そもそも受容層が多く、ジャンルとして豊穣であったからと言えるでしょう。

 しかしこのブームも、オイルショックとともに動きが鈍くなっていきます。結果論で紋切型の説明にはなりますが、社会の動きや経済の動向で、子供向けコンテンツの趨勢が変わってしまうというのは面白いものです。

 その後、ウルトラシリーズや怪獣の系譜が途絶えてしまったわけではなく、80年代には何度も再放送されていますし、アニメ版の『ザ☆ウルトラマン』や、新機軸の『ウルトラマン80』、雑誌グラビアやマンガでのクロスメディア展開をし、マルチバース的な試みも見られた『アンドロメロス』などもありました。

 時代が平成になり『ウルトラマンティガ』『ダイナ』『ガイア』が3年連続で放映され、少し間が空いて『コスモス』、映画『ULTRAMAN(2004)』と世界観が繋がる『ネクサス』、さらに『マックス』『メビウス』と続きます。このあたりの時代は、劇場版やビデオ作品などでもシリーズは続いていつつ、番組が必ずしも毎年連続しないところにウルトラシリーズの紆余曲折がありまして、その浮沈とファンのやきもきした感情を書こうと思うとキリがありません。

 けれど、人によって様々とはいえ「ウルトラマンが途中で潰えた」なんていう印象を持ってる人は少ないと思います。毎年新作が公開されるほど幸せではなかったけれど、いつもどこかでウルトラマンや怪獣たちのことを感じていた。そういうイメージがあります。

 様々な要因が絡み合って、本筋のテレビ番組放映以外のムーブメントも含めて、親子三代にわたって愛されている作品シリーズ。

 その秘密はまず怪獣にあるとぼくは思っています。

 テレビCMではヒーローばかりがIPとして重宝されるわけではありません。バルタン星人、ゴモラやゼットンといった人気怪獣が玩具以外の他業種のCMへ顔を出すことも多いですし、昔懐かしい作品を紹介するバラエティ番組では怪獣は常連でした。街のおもちゃ屋から怪獣のソフビ人形が消えるということもなかったはずです。

 ウルトラシリーズの怪獣はとにかく印象的で、最近の作品にも再登場してきます。そのキャラクター描写に1エピソード(場合によっては前編後編や劇場版の長尺など)を割くわけですから、番組は怪獣のプロモーションビデオみたいなものです。

 しかも、ウルトラマンに倒されるパターンであれば、怪獣人生(?)でのラストシーンが映像として記録されるわけです。

 また、いつもというわけではないですが、怪獣のバックボーンとして社会的な示唆に富んだ設定が盛り込まれることもあります。果たして倒してしまうべきだったのか、人間の業の裏返しではないか、そう考えさせられる怪獣もたくさんいました。 

 それに、視聴者層が幅広いので、「どの怪獣が印象に残ってる?」の回答が多岐にわたります。子供の頃に見てトラウマになった、という理由で覚えている場合もあるでしょうし、ウルトラマンを窮地に追い込む強さに惚れてしまった場合もあるでしょう。

 十人いれば十人の回答、語りつくせない魅力がある。これも怪獣の奥深さです。そのほか、ぼくは「ゼットン」と「キングジョー」が好きなのですが、この2つを掛け合わせた「ペダニウムゼットン」が登場するなど、過去の怪獣が現代的にリファインされることがあるのも魅力の一つといえます。

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