
ミスプリは罪じゃない、伏線だ――私たちは修正で強くなる
非通知着信。
その四文字は、DMより怖い。音が出る。相手の声が出る。逃げ道が、減る。
私は通話ボタンの上で指を止めた。ミレイがチャットで打つ。
「出ないで」
さやが続ける。
「出ない。記録。距離。運用で守る」
私は通話を切り、スマホを伏せた。心臓が暴れる。耳栓を押さえて、息を吐く。
数秒後、Murmurに通知が来た。
「あなたの勤務先、知ってる」
送り主は、昨日の“会社バレ”DMと同じ記号アカ。
喉が冷える。足の裏が冷える。私は、こういうとき、声が出ない。出ないけど、文章は出る。私は震える手で、さやに共有した。
さやは即座に返した。
「守る。今からやること:1)記録 2)相談 3)距離。晒し返しはしない。手順は書かない。必要な人に渡す」
必要な人。現実の線。私は頷いた。
ミレイが打つ。
「ひより、仕事行ける? 今日、休んでもいいよ」
私は迷った。でも、休むと、相手の支配が勝つ気がした。私は短く返した。
「行く。行って、帰って、作る」
「よし。強い」
「強くない。順番」
順番。今日も順番が私を守る。
仕事中、私は一秒で集中が切れるたびに、メモ帳に「戻る」と書いた。戻る。戻る。推し活じゃなく、私の生活に。生活を壊されたら、推しを応援できない。
夜。
私たちは冊子を仕上げた。ミレイが手作業で表紙を作り、推し色の海を“抽象”で置いた。ガラス片みたいな小さな模様。文字は大きく、読みやすく。
表紙の一文。
「最前列じゃなくても、届く」
私はそれを見て、胸が熱くなった。私の弱みが、初めて、堂々と表紙に立っている。
製本は、手作業だ。ホチキスの位置が少しずれる。紙が少しだけ歪む。ミスプリが出る。ページ番号が一つずれる。
ミレイが言った。
「……ミスった」
私は笑いそうになった。
「罪じゃない。伏線」
「伏線?」
「後で直して、強くなる伏線」
ミレイが泣き笑いのスタンプを送ってきた。
さやが短く言う。
「修正。今夜のうちに。明日は現場前日」
私はページを整え、文末の表記を統一し、誤字を潰した。推しの名前は出さない。ロゴも出さない。個人情報はゼロ。安全な言葉だけを残す。
修正が終わったとき、私は疲れていた。疲れているのに、少しだけ誇らしかった。最前列に立てない私が、何かを作った。
その瞬間、ユズの投稿が流れた。
「変な企画、やめましょうね。推しのためを思うなら、静かに」
私は画面を閉じ、以降は通知を見ない設定にした。反応しないのも境界線だ。見ない。燃料にならない。――でも、心のどこかで、ユズを憎みたくないと思っていた。憎むと、自分が壊れる。
榊さんから短いメッセージが来た。
「渡せるのは今夜まで。明日はバタつく」
今夜まで。
私は耳栓ケースを握りしめた。
今夜、渡す。
推しに。直接じゃない。榊さんを通して。でも、届く。
そして、スマホがまた震えた。
「明日、現場で答え合わせしよ」
yuzu-kingdom。
答え合わせ。
何の。
私は息を吐いて、眠れないまま、夜を抱えた。
「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」
※本作品はAI生成本文を含みます
作者紹介

ヒトカケラ。
好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。
公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel









