連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第20話

耳が痛いほどの静寂――その瞬間、私は『異変』に気づいた

ステージの照明が落ちた。
 客席が息を呑む。私は片耳の耳栓を浅くしたまま、もう片耳で空気を聴いた。大きな音より、突然の変化が怖いからだ。怖いのに、聴く。私の弱みは、ここで武器になる。

 宵玻璃(よいは)が出てきた。
 黒い衣装、深い青緑、ガラス片みたいなアクセ。近い。近いけど、私は最前列じゃない。少し後ろ。呼吸ができる距離。

「……来てくれて、ありがとう」
 その声が、私の片耳から入って、胸の奥に落ちた。

 曲が始まる。
 静かな曲。息のような音。私は、その“静けさ”に救われるはずだった。

 ――なのに。

 途中で、音が一瞬、消えた。
 完全な無音じゃない。でも、音の層が一枚、剥がれたみたいに、急に薄くなる。

 客席は気づかない。ざわめきもない。曲は続いているように見える。でも、私は気づいた。耳が痛いほどの静寂。静寂は、私にとっては音だ。鋭い音。

 私はメモ帳を開き、短く書いた。
「異変:音が落ちた」

 ミレイの顔を見る。ミレイは気づいていない。でも、私の顔を見て目を見開いた。
「……ひより?」
 私は小さく首を振り、指で“待って”を作った。

 さやの言葉が頭に響く。
“騒がない。現場は最後の砦”

 私は騒がない。私は、運用で守る。
 私はスタッフ導線の方を見る。榊さんがいる。視線だけで呼ぶのは無理。私は、ミレイの袖を引き、耳元で小さく言った。
「……スタッフ。異変。音」
 ミレイが頷き、通路側へ少し動く。騒がない。走らない。邪魔しない。運用。

 数十秒後。
 音が戻った。
 戻った瞬間、客席が遅れてざわめいた。
「今……?」
「一瞬、音……?」
 でもざわめきは大きくならない。曲が続くからだ。推しが歌っているからだ。

 息を吐いた。
 よかった。守れた。燃料にならずに、守れた。

 曲の終わり。
 宵玻璃が客席を見た。
 視線が泳ぐ。ひとつ、私の方――というより、私の周囲に落ちる。
 そして、ほんの一瞬だけ、頷いた。

 私の胸が跳ねた。
 勘違いかもしれない。勘違いでいい。でも、あの頷きは、私の運用への“ありがとう”みたいに見えた。

 終演間近。
 通路側から、榊さんが近づいた。人混みの中で、紙を手渡すなんてできない。だから榊さんは、付箋を小さく折って、私の掌に滑り込ませた。

「今。渡せる? バックヤード」

 付箋には、それだけ。
 私は息を呑んだ。怖い。嬉しい。怖い。嬉しい。矛盾が胸を殴る。

 そして、背後から、冷たい視線を感じた。
 ユズが、見ている。

 答え合わせの扉が、開いた。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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