連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第12話

推しの投稿が消えた――タイムラインが悲鳴で埋まる夜

改札前は、人の波で満ちていた。私にとって、最悪の環境。最善の安全。矛盾が、私を守る。

 ミレイは少し離れた場所で待機していた。派手めの服と推し色リボンで、すぐ見つけられる。さやはオンラインで見守り、チャットで指示を飛ばす。

「時間は10分。離脱ラインを決めて」
 私は“離脱ライン”という言葉に、少し救われた。逃げていい場所があるだけで、人は進める。

 19:30。
 黒いコート。疲れた目。前回と同じ人。
 今日は、榊さんがが小さく名刺を出した。そこにだけ、フルネームがあった。――榊しおり。

 榊さんは人混みの中で、私にだけ届く声量で言った。
「来てくれてありがとう。……ごめんなさい。今日も、名乗れない」
「名乗れないなら、私は聞けません」
 私の声は小さい。でも、言葉はぶれなかった。怖いからこそ、線を引く。

 榊さんは一瞬だけ眉を下げた。
「……分かってる。だから、言える範囲だけ言う」
 榊は白い封筒を持っていない。代わりに、スマホの画面を少しだけ見せた。そこには、短い定型文が並んでいる。広報の仕事の匂い。

「投稿が消えたのは、本人の意思だけじゃない。……でも、本人は、続けたい」
 続けたい。
 その一言が、胸に刺さって、温かい。

 榊さんは続けた。
「今、ファンの動きが、本人の首を絞める。憶測が増えると、守れなくなる。お願い。推測を回さないで」
「……私たちは、回してません」
「知ってる。あなたの文章は、火に油を注がない。だから……あなたに頼みたい」

 頼みたい。
 私は息を呑んだ。最前列に立てない私に、公式が頼む。そんなこと、あるはずがない。だから怖い。

 私は言った。
「条件をください。私たちが守る線を。守れる範囲を」
 榊さんは、ほんの少しだけ笑った。疲れた顔のまま。
「攻撃をしない。個人を晒さない。憶測を断定しない。……そして、現場で騒がない」
「騒がない」
「そう。現場は、最後の砦。崩したくない」

 最後の砦。
 その言葉で、私は理解した。次がある。現場がある。最後かもしれない現場が。

 その瞬間、タイムラインの通知が爆発した。
「宵玻璃(よいは)、アーカイブ非公開増えてる!」
「メン限も消えた」
「終わりだ」
「誰のせいだ」

 私は画面を見て、喉が凍った。
悲鳴で埋まる夜。推測で人が人を刺す夜。

 榊さんが、低い声で言った。
「敵はファンじゃない。……でも、ファンが燃料になる」
 私は短く息を吐いた。燃料にならない。なりたくない。

 ミレイが遠くから手を振った。私は小さく手を返した。
 ここに味方がいる。だから私は、折れない。

 榊さんは最後に言った。
「もう一度だけ。現場を残す。そこまでが、私の仕事」
 そして、小さく頭を下げた。

 私は、その背中に向かって言った。
「……ありがとうございます」
 声は小さい。でも、届いた気がした。

 帰り道。
 スマホが震えた。

「現場で答え合わせしよ」

 送り主は、yuzu-kingdom。

 答え合わせ。
 何の。
 誰の。

 私は画面を閉じ、耳栓を押し込み、息を吐いた。
 次話のクライマックスは、もう始まっている。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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