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「推さ日記」第6回『推し(#ババババンビ)が武道館いくので死ねなくなった』

由緒正しい「アイドル道」の軌跡

 メジャーシーンに躍り出るにあたって、有効なアーカイブって「映像」だと思うんですよね。もちろんライブ映像もそうなのですが、アイドルといえばなんといってもバラエティ番組です。

 自前のYouTubeチャンネルを持っているアイドルはたくさんいますが、#ババババンビは公式のチャンネル以外に、めずらしくオンデマンド配信で冠番組を持っています。この番組『#ヤバババンビ』は元Paraviでスタートしただけあってテレ東制作。現在はU-NEXTで全話を見ることができます。つい最近『VIVANT』全話を観るためにU-NEXTの会員になったという人! 今すぐ見るべし。

#ヤバババンビ(U-NEXT)

https://video.unext.jp/title/SID0089374

#ヤバババンビ Season2(U-NEXT)

https://video.unext.jp/title/SID0089290

 アイドルが出演するバラエティ番組では概ね芸人が司会や進行をして、メンバーが無理難題にチャレンジするというのがフォーマットではあるけれども、#ババババンビは一切手抜かりがない。なんてったって、イジリー岡田が登場するんですよ。(敬称略ですみません。でも一つ一つに「氏」をつけてると、このテンポ感では伝えられないんスよ!)

 ご存じない人や「ギルガメッシュないと」から記憶が途絶えている読者のためにアイドル番組の文脈で説明をすると、押しも押されもせぬアイドルグループであるAKB48の様々な番組や乃木坂46の冠番組「NOGIBINGO!」のMCを務め、アイドルの喜怒哀楽を余すところなく引き出したのがイジリー岡田さんです! 必要とあらば逃げ惑うアイドルへの高速ベロも厭わない、レジェンド中のレジェンド。

 それが第一期で#ババババンビの魅力をこれでもかと引っ張り出す。往年の名企画「寝起きドッキリ」もアイドル番組定番のバンジージャンプも肝試しも水泳大会もきっちりやり遂げるあたり、こんなに出し惜しみなくていいの!? というサービスっぷり。ライブの裏側を追う回のタイトルにきちんと「Documentary of〜」とつけてくるあたり、制作スタッフも相当にわかっててやってる。

 Season 1〜2を通じて、ゲスト芸人も毎回豪華。例を挙げると、安藤なつ(メイプル超合金)、ゴー☆ジャス、きしたかの、クロちゃん(安田大サーカス)、スギちゃん、東京ホテイソン、小沢一敬(スピードワゴン)……etc.

 お笑いや漫才に疎く、「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」を聴いていてもなんのことだかサッパリわからないことの多いぼくでも全員知ってます! 考えてみれば『パーティ!』のMVに出演しているのはゆってぃだ……。それくらい、多くの人に親しまれている芸人ばかりをブッキングしてくる。

MV『パーティ!』

 この面々がそれぞれの持ち味で、#ババババンビのメンバーに光を当てていくんだから、面白くないわけがない。
 もう一度言います。『VIVANT』全話を観終わって、そろそろU-NEXTのサブスクを解除しようかなぁ、なんてうっすら思ってるあなた! 解約しないで『#ヤバババンビ』を見続けろ。

 さて、バラエティ番組がカジュアルの極北だとしたら、行政キャンペーンへの採用は手堅さの沖ノ鳥島。埼玉県杉戸町サポーター、兵庫県タイアップMV制作と地域行政への目配せもきっちり。しかも神戸を中心に撮影されたMV『スノードーム』の出来がよい。

MV『スノードーム』

兵庫県Webサイト
https://web.pref.hyogo.lg.jp/press/20230113_12117.html
(アイドルの記事で公文書へのリンクを貼ることになるとは…)

 仕事柄地方行政には詳しいほうなのでわかるんですが(←おまえは何者なんだよ)こういうのって普通、芸能事務所がちょっとやそっとの売り込みをしたところで、企画を通すのも予算を通すのも難しいんですよ。特にコンプライアンスが重視される昨今では芸能人の選定にはめちゃくちゃチェックが入る。むしろチェックを入れていない自治体はどうかしてるってレベルです。

 可能性としては「もともと広報予算が計上されていて、その範囲内で出演者選定のコンペに勝てた」とか「制作費と動画の告知にかける広告費用をすべて芸能事務所が持つ座組で県の広報に企画を持ち込んだ」とか「県知事がむちゃくちゃファンで鶴の一声で決まった(そんなんで決まってたまるか!)」とかいろいろな道はあるんですが、決まるかどうかはわからないし、プロジェクトが走り始めたところで、企画を知った気難しい地方議会議員が「このババババンビというのはよくわからんが、馬と鹿と書いてある。馬鹿者に県の広報を任せてよいのかね?」と広報広聴課の課長あたりを激詰めパワハラして計画が頓挫してしまう恐れだってある。

 そういう背景を思い浮かべると、芸能事務所の渉外担当者や営業マンが相当に優秀なのだろうな、ということもあるんだと思いますが、成立した仕事に対して全力であたってやり遂げた#ババババンビがものすごい、という感想になるのです。

 ここまでやるからこそ、コロナ禍でのデビューというディスアドバンテージを跳ね返して4年で武道館へと辿り着くということなんだろうな、と。王道というより、いずれ成功したと認められるアイドルが振り返ったときに、その轍が王道と呼べるものであった、という一つのマスターピースになると思います。

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