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「推さ日記」第6回『推し(#ババババンビ)が武道館いくので死ねなくなった』

コラボレーション、タイアップのここが凄い!

 一応、業界人も読んでいるサイトなのでそれっぽいことを書きたいと思うんですが、一般論として、コラボレーションってどちらかが下駄履いてもうまくいかないことがほとんどですよね。身も蓋もないことを言えば、「いかに同レベルのパワーで自分より客を持っている相手を選べるか」にかかっているというか。

 格上の相手だと、自分の顧客を吸い取られる恐れがあるんですね。おこぼれにあずかれることなんてないです。
 じゃあ自分より格下の相手と組めばよいかというと、それじゃコラボレーションの規模と効果が小さくなってしまう。アイドルの対バンライブやフェスって、新規顧客を開拓できる最大のチャンスでありつつ、顧客がよそに流れるかもしれない危険性もあるというのに似ています。
 そういう状況下でどうするのがよいかというと、「客層がカブらない相手」「違うメディア・媒体で客を持つ相手」を選ぶのが安全策になります。

 運営型のスマホゲームってアニメとよくコラボしますよね。でも運営型スマホゲーム同士のコラボってどうでしょうか。企画が現場から上がってきたとしても、相手の各種数値をチェックしたうえで、だいたい成立しないでポシャったりしてるとかしてないとか。
 そういう一般的な傾向があるという前提で、#ババババンビのコラボやタイアップを俯瞰してみます。

 例えば、ドン・キホーテでのコラボグッズ販売。推しinfoの読者ならお馴染みかもしれないですが、ドンキのコラボってアニメやゲームがメインなんですよね。実在のアイドルのグッズがこのラインで並ぶのは珍しい。ひょっとしたら#ババババンビ以外はコラボしたことがないかもしれない。
 アイドルにとっては店の棚が広告そのものとなりますし、店舗にとってはアイドル目当ての客が来てグッズやほかの商品を買ってくれればいいので、双方にとって良いコラボになります。これはさきほどリンクを貼ったMV『パーティ!』の公開時期に行われたROUND1とのコラボも同様です。
 あまりにグッズが売れなくて在庫を抱えてしまう、というのがバッドケースとして考えられる事態ですが、そこは企画次第ですね。

 女性向けのスマホゲームで一時期とんでもない勢いでコラボ菓子などを出してコンビニの棚を占有したタイトルがありましたが、何か月かして見切り品のカゴにわんさかその商品が残っているのを見るにつけ、こんな不誠実な棚の占拠をしてしまったら二度とコラボしてもらえないんだろうな、という気持ちになりました。お、今なんかとても推しinfoっぽいこと書いてるぞ!

 次はカヴァー曲の例です。アイドルがほかのアイドルの曲をカヴァーすることはザラなんですが、#ババババンビの場合はすごい角度からこれが投げ込まれます。
 グループ名にちなんで布袋寅泰の『バンビーナ』。これほんとです。ダジャレ採用かよ!? と思い聴いてみると「こんなカワイイ曲を布袋寅泰が歌ってた……ってコト!?」と再び頭の中のハチワレが空気を読まずに出てきてしまう。そこに驚いている場合ではない。
 日本のロック史上において有名なこの曲をいただいて、なおかつそれに負けないパフォーマンスをするのが#ババババンビなんですよ! エアギターをモチーフにしたステージ上を駆け回る振り付けがとってもいい。

 コラボとして最高ですよね。「原曲を聴いてみたいな〜」って気持ちになって布袋寅泰のファンが増えたとしても、#ババババンビのファンを辞めてしまうというのは考えづらい。
 これで武道館で布袋寅泰がゲスト出演したら最高なんですが、ないですかね。もしそんなことが起こったら秒速で失神する自信がありますが……。

 コラボやタイアップ、最後の例は映画『放課後アングラーライフ』の主題歌『ミカンセイ』。
 角川映画ですよ! 角川映画でアイドルといえば『時をかける少女』『探偵物語』なわけですが、なんか例えが総じて古くて申し訳ないです。

釣り女子青春ムービー『放課後アングラーライフ』予告編

 これも映画事情を書き始めると長くなってしまうのでかいつまんで話すと、はやりの若手俳優が出てきてホれたハれたの話になる映画は年に何作も公開されていますが、それとは別に、ステージで活動しているアイドルを主演とする映画もジャンルとして存在しています。とはいえ四半世紀くらい前にモーニング娘。の『ピンチランナー』で歯痒い思いをしてからご無沙汰という御仁も多いはずで、一種カルト的なジャンルとして語られがちというか。

 奥歯にものが挟まったような言い方をしてますが、なんというか歌も踊りも演技も全部やるのがアイドル、だから演技だけを取り出すとまずい、という偏見が従来あったはずなんです。おそらく2010年代の半ばまであったように思います。

 でも、現代のアイドル映画は全然違うんですよ! 世代が変わり、良質の物語に囲まれて育つと、こんなにも物語への解像度が違い、そして演技へ反映されるのか、という驚きに包まれます。配信を念頭に置いた制作へと時代が変わったことも影響があるかもしれません。

 例えば乃木坂46から3名が主役に抜擢された実写版『映像研には手を出すな!』は原作キャラの持ち味を再現した演技がすごく良かったわけですし、むしろ浜辺美波の無駄遣いのほうが気になったほどです。そして、先ほど「Documentary of〜」をネタにしましたが、ドキュメンタリータッチの『悲しみの忘れ方~Documentary of 乃木坂46~』『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』も壮絶です。とくに後者は、満身創痍の平手友梨奈をカタパルトでステージに送り出すシーンがあるんですが、『新世紀エヴァンゲリオン』で初号機にシンジ君を載せて強制射出するシーンを思い浮かべてしまうくらい衝撃があります。

 ドキュメンタリーといえば、メジャーデビューシングル『ゲイシャフジヤマ』のヒット祈願で、#ババババンビはこれまた由緒正しいアイドル企画として富士山登頂を成し遂げた(!)んですが、ニコニコ動画で24時間(実際は28時間以上)生放送をやったんですね。スタッフ、プロのガイドだけでなく、スポーツ紙の取材陣も一緒になって登る完全なノンフィクション・ドキュメンタリー。

 アイドルはフィクション的な存在ではあるんですが、編集ナシでこのバイタリティとパーソナリティを見せつけられると、好きにならない理由なんかありません。

#ババババンビ「ゲイシャフジヤマ」ヒット祈願 ”富士山”登頂 密着24時間?生中継

https://live.nicovideo.jp/watch/lv342532659

 映画に話を戻すと、日本のホラー映画がジャパニーズホラーとして世界に知られるようになってから四半世紀が経つわけですが、同様にこれからの四半世紀は日本のアイドル映画が世界に知られていくのかもしれません。
 ぜひ『放課後アングラーライフ』を観て、そしてエンドロールに流れる『ミカンセイ』の疾走感に身を委ねてほしい。欲を言えば、#ババババンビを起用しておいて主題歌だけというのはもったいない! 次はぜひ主演に挑戦してほしいと思います!

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