連載 ゲーム 推しメン

「推さ日記」第7回『関係性へのシフト』(AGF 2023感想戦)

もう作品そのものには頼れない!?

 博打を打つにしても掛け金を持たずに始めるほうが脆弱だ、という話の延長でもあるのですが、こうなると、テーマや物語を含んだ「作品」に重きを置いてしまうのは危険ということになります。ちょっと矛盾した話に感じるかもしれないんですけれども。作品が当たってビッグビジネスに繋がることはあるけれども、ビッグビジネスを狙うときに作品単体を当てようとしてはいけない、ということですね。

 では何をコアにするか。キャラクターですか? 演者ですか? 世界設定ですか? 醸される雰囲気ですか? というところで、最初に上げた「関係性」があらためて可視化され、注目されているわけです。

 いや、みんな薄々気づいていたんですよ。だってもう10年近く「エモい」って言葉を使ってるじゃないですか。今はちょっと声に出して言うのが恥ずかしいかもしれないけれど。

 テーマや物語が薄くても、似たような量産型キャラクター達であっても、関係性があればそこからビジネスが始まり、ビジネスが回ればいつの間にかテーマも物語もキャラクターの奥深さもついてくる。ただその因果を間違えない、というのが重要にみえます。

 ということが、AGFであっちこっち行って足を棒にしている間に、ぼくの頭の中を駆け巡ったんですね。もう恋愛を押し付けるのは流行りじゃねぇなぁ、とか。推しコンテンツの世界も、試行錯誤の期間を過ぎてビジネスに最適化されちまったなぁ、とか。これから作るとするなら、関係性が強固なもの一択でそれでもなお博打だなぁ、とか。

 古からのオタクには嫌儲思考があるので、それにおもねって一も二もなく「やっぱ作品だ!」って言っておけば一定層にはウケはいいかもしれませんが、マスはそんなこと気にしません。目にする機会が多く、隣人が好んでいる(と思われる)ものを好むんです。

 名も知れぬ屍となるのを避け、とにかく生き残るということが勝利条件の一つですので、読者の皆様に置かれましては、業界人であっても単なる視聴読者・消費者であっても、「関係性」に着目してコンテンツと向き合っていくのがよろしいかと思います。

1 2 3 4 5
RELATED POST