奇しくも今回の内容を執筆中に、電ファミさんで女性向けキャラクタービジネスについて記事が出ていました。
この「推さ日記」はエッセイだと思っているので書き散らしていつつ、調査研究も生業の一部にしていますのでわかるのですが(←前回に引き続きおまえは何者なんだよ)、大変に「浅い」記事だと感じました。
この記事はマンガ・アニメ業界の知見を共有する「IMART 2023」のセッションの一つということなので、今回の記事で挙げたような派生ビジネスすべてを網羅するという主旨ではないのは重々承知なのですが、限られた時間の中で俯瞰して総花的に幅広く伝えたいのか、業界構造あるいは消費構造を解き明かしたいのかがわからず、全体的にぼやけています。
前段のマンガにしたって、2000年代前半で途切れてしまっていますが、郊外ショッピングモールの書店で、都会に比べて異様に棚の面積をとっていたりするペーパーバッグのレディコミの話、出てないですね。そこから電書の「女性向け」マンガ、各社から林立しているマンガアプリ・プラットフォームで何が売れているかに言及することで見えることってあると思うのですが。
後段のマーチャンダイジングの話にしたって、「当事者の目線で」という割には、このジャンルの事業者が入っていないのが気になります。呼ぶことで深堀りできる「生き字引」のブッキングが望まれるわけですが、それがスッポリ抜けている。こういうときに、池袋のアニメショップの仕入れ営業担当の話、聞いてみたいですよね。
で、これは掲載メディア側でのテーマ設定や編集の問題もあって、今回のような「消費者側からの研究」をどうフォローしていくかが重要なんですが、そこに抜けがあるんです。なぜなら、読者みんな「消費者」なので、体感があるんですよ。その体感との擦り合わせを、編集さんがしていないのかなー、って思ってしまいました。
例えば文中の『2000年3月に家庭用ゲーム機でありながらもDVD再生機能を持つPlayStation 2が発売された。同機がファミリー層や女性層にも普及し、媒体がDVDになったことで4話分収録されて6000円と映像ソフトの価格が手に取りやすくなった。』なんですが、前半分は体感に合ってるんですが「4話分収録されて6000円と映像ソフトの価格が手に取りやすくなった」なんていう体感は無いです。
これは一万円台だったビデオソフトとの比較的に安くはなったのですが、ファングッズとしては「高い」ままなんです。
となるとここに入るべきは「ビデオ(DVD)レンタルショップ」の話で、TSUTAYAやGEOのデータを引いてくる必要があるんですね。広い店内にアニメシリーズが「全揃い」している風景、この体感に読者(セッションにおいては聴衆)はグッと寄せられるわけです。
それに『うたプリ』は確かにマーチャンダイジングの成功例なのですが、誰から見ても「ゲームが先」だったですし、その反対側に「CDが先」の『Rejet』があり、そんなことよりもっと激しかったのが……。と思ったらこんなツイートが。
ですよねぇ。というわけで(この記事を指したものかは不明ですが)演者からもツッコミがある始末。
せっかく『推し活』というキーワードが一般的になってきたご時世なのだから、女性の収入が増えたという結論じゃなくて未婚率に言及したり、結婚しても少子化ということで家庭内の財がどこへ向かっているのかに触れたり、現象を俯瞰するために考えなきゃいけないことって、いっぱいあるんですよ。
ということで、上がってきた原稿に対して体感をエビデンスをもって擦り合わせていくのも編集さんの腕の見せどころだと思います。そういう結論!?
追記も長くなってしまった……。奥深くて面白いマーケットということには変わらないので、今後もガッツリ注目していきたいと思います!
ライトにいきますと書いたのに全然ライトじゃなかった! 次回はまたゲームレビューをしたいと思います!
(おわり)
執筆/しおにく