
推しの投稿が消えた――タイムラインが悲鳴で埋まる夜
改札前は、人の波で満ちていた。私にとって、最悪の環境。最善の安全。矛盾が、私を守る。
ミレイは少し離れた場所で待機していた。派手めの服と推し色リボンで、すぐ見つけられる。さやはオンラインで見守り、チャットで指示を飛ばす。
「時間は10分。離脱ラインを決めて」
私は“離脱ライン”という言葉に、少し救われた。逃げていい場所があるだけで、人は進める。
19:30。
黒いコート。疲れた目。前回と同じ人。
今日は、榊さんがが小さく名刺を出した。そこにだけ、フルネームがあった。――榊しおり。
榊さんは人混みの中で、私にだけ届く声量で言った。
「来てくれてありがとう。……ごめんなさい。今日も、名乗れない」
「名乗れないなら、私は聞けません」
私の声は小さい。でも、言葉はぶれなかった。怖いからこそ、線を引く。
榊さんは一瞬だけ眉を下げた。
「……分かってる。だから、言える範囲だけ言う」
榊は白い封筒を持っていない。代わりに、スマホの画面を少しだけ見せた。そこには、短い定型文が並んでいる。広報の仕事の匂い。
「投稿が消えたのは、本人の意思だけじゃない。……でも、本人は、続けたい」
続けたい。
その一言が、胸に刺さって、温かい。
榊さんは続けた。
「今、ファンの動きが、本人の首を絞める。憶測が増えると、守れなくなる。お願い。推測を回さないで」
「……私たちは、回してません」
「知ってる。あなたの文章は、火に油を注がない。だから……あなたに頼みたい」
頼みたい。
私は息を呑んだ。最前列に立てない私に、公式が頼む。そんなこと、あるはずがない。だから怖い。
私は言った。
「条件をください。私たちが守る線を。守れる範囲を」
榊さんは、ほんの少しだけ笑った。疲れた顔のまま。
「攻撃をしない。個人を晒さない。憶測を断定しない。……そして、現場で騒がない」
「騒がない」
「そう。現場は、最後の砦。崩したくない」
最後の砦。
その言葉で、私は理解した。次がある。現場がある。最後かもしれない現場が。
その瞬間、タイムラインの通知が爆発した。
「宵玻璃(よいは)、アーカイブ非公開増えてる!」
「メン限も消えた」
「終わりだ」
「誰のせいだ」
私は画面を見て、喉が凍った。
悲鳴で埋まる夜。推測で人が人を刺す夜。
榊さんが、低い声で言った。
「敵はファンじゃない。……でも、ファンが燃料になる」
私は短く息を吐いた。燃料にならない。なりたくない。
ミレイが遠くから手を振った。私は小さく手を返した。
ここに味方がいる。だから私は、折れない。
榊さんは最後に言った。
「もう一度だけ。現場を残す。そこまでが、私の仕事」
そして、小さく頭を下げた。
私は、その背中に向かって言った。
「……ありがとうございます」
声は小さい。でも、届いた気がした。
帰り道。
スマホが震えた。
「現場で答え合わせしよ」
送り主は、yuzu-kingdom。
答え合わせ。
何の。
誰の。
私は画面を閉じ、耳栓を押し込み、息を吐いた。
次話のクライマックスは、もう始まっている。
「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」
※本作品はAI生成本文を含みます
作者紹介

ヒトカケラ。
好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。
公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel










