連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第15話

『中止』の二文字が、努力を消し炭にする――それでも私は折れない

印刷所からのメール件名は、短かった。

「入稿受付:中止」

 私は一瞬、意味が理解できなかった。中止。何が。私たちの一冊が。48時間の作業が。眠れない夜が。全部が二文字で燃え尽きる。

 胸の奥が空洞になって、耳の奥がキーンと鳴った。耳栓をしていても、内側の音は消えない。

 ミレイが先に叫んだ。
「は!? なんで!?」
 さやがすぐに返す。
「理由を読む。感情で殴らない。次の手を切る」

 私はメール本文を読み、指先が冷たくなる。
「権利関係の確認が必要な素材が含まれる可能性」
 写真もロゴも使っていない。なのに、可能性。可能性で止まる。現実はいつも、可能性で止まる。

 私は、泣きそうになって、でも泣くと息が乱れるから、呼吸を数えた。四秒吸って、六秒吐く。
 息が戻る。頭も戻る。

 さやが言う。
「中止は終わりじゃない。形を変える。最短の代替は“自作冊子”」
「自作……?」
ミレイが打つ。
「手作り? コピー? ……でも配布しないんだよね」
「しない。本人宛の1冊のみ。榊さんの線を守る」
 さやが短くまとめる。
「紙の質、装丁は落ちても、言葉は落ちない。言葉で勝つ」

 言葉で勝つ。
 私はその言葉に、もう一度立ち上がる力をもらった。

 私は構成をさらにシンプルにした。
・表紙(タイトル風の一文だけ)
・短文集(ページ番号のみ)
・最後の手紙(1ページ)
・奥付なし(個人情報ゼロ)

 ミレイが言う。
「表紙の一文、何にする?」
 私は迷わず打った。
「最前列じゃなくても、届く」
 ミレイがスタンプで爆発した。
「それ!! それが全部!!」

 そのとき、公式の硬い通知が来た。
「無許可配布物の持ち込みは禁止です」
 胃がねじれる。持ち込み。禁止。私たちの一冊は、持ち込みになるのか。

 さやが即座に整理する。
「配布しない。持ち込みの定義を確認。榊さんに問い合わせる。憶測で折れない」
 私は榊さん宛に短文を作る。
「本人宛の1冊のみ。配布なし。写真やロゴなし。個人情報なし。現場持ち込み可否の確認をお願いします」

 送信。
 返事を待つ時間が、怖い。待つのは苦手だ。待つと、推測が増える。

 その間に、ユズの投稿が流れてきた。
「会社特定されても知らないよ? 変な動きする人は、推しを壊すから」

 私の背筋が冷えた。
会社。特定。晒し。
私は、仕事の現場の顔が浮かぶ。静かな机。モニターの光。名前のない私。

 ミレイが怒る。
「脅しじゃん」
 さやが短い。
「こちらは守る。晒し返さない。距離を取る」

 守る。
私は耳栓ケースを握り、深く息を吐いた。
折れない。折れない。
折れたら、推しの“続けたい”が遠くなる気がする。

 その瞬間、榊さんから返事が来た。

「1冊本人宛なら、受け取れる形にします。現場では騒がないで。受け渡しは、私を通して」

 私の胸が、少しだけ温かくなった。
でも、温かさの直後に、また冷たい通知が来た。

「非通知着信:1件」

 画面の上で、通話ボタンが光っていた。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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