連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第19話

開場まであと1時間、現場が崩壊しかける――誰かが嘘をついた

開場遅延。
 その通知は、私の胸の奥にある“最悪の予感”を、正確に呼び起こした。

 会場前はすでに人が多い。列が長い。空気が熱い。怒りがうっすら漂っている。耳栓を片耳に入れ、もう片耳は浅く。私は水を握りしめ、息を数えた。

 ミレイが私の隣で、いつもより声を落として言う。
「ひより、顔色やばい。いける?」
「……いける。離脱ライン、ある」
「よし。さやの言う通り。離脱は逃げじゃない」
 私は短く息を吐いた。逃げ道があるから、進める。

 列の前方から、ざわめきが広がった。
「まだ入れないの?」
「スタッフ何してんの」
「最悪」
 言葉が増えると、空気が重くなる。重い空気は、音になる。

 私は視線を落とし、メモ帳を開いた。現場メモは、私の耳栓だ。
・遅延理由は不明
・列が詰まり、怒りが増えている
・“誰か”がスタッフに強く詰めている気配

 その“誰か”が、すぐに見えた。
 ユズだ。
 スタッフ導線の近くで、首から何かを下げたまま、腕を組んでいる。近すぎる距離。普通のファンが立てない位置。

 私は目を逸らした。追わない。見ない。でも事実は残す。
 ミレイが小さく呟く。
「……あれ、完全に近い。なんであそこにいるの」
 私は答えられない。答えがない。答えがないから、怖い。

 そこへ、さやからチャットが来た。
「列が荒れそうなら外側へ。静かな場所へ移動。怒りに触れない」
 私は列の外側に一歩ずれた。空気が少し冷たい。呼吸が戻る。

 そのとき、近くの女性が小さく悲鳴を上げた。
「……切れた!」
 バッグのストラップが外れて、床に落ちたらしい。周囲がざわつく。怒りの空気に、トラブルが混ざると一気に爆発しやすい。

 ミレイが即座にしゃがんだ。
「大丈夫! 待って、私これ、持ってる」
 ミレイは痛バッグのポケットから裁縫セットを出した。針と糸、安全ピン。手が迷わない。慣れている。運用だ。

「一回結んで、ここ安全ピンで止める。はい、これで応急」
「ありがとうございます……!」
 周囲の空気が、ほんの少し柔らかくなる。怒りの中に、助け合いが混ざる。私は胸の奥が温かくなるのを感じた。

 その瞬間、スタッフ側からアナウンスが出た。
「開場は、さらに20分遅れます。申し訳ありません」
 謝罪の声量が小さい。届きにくい。届きにくい謝罪は、怒りの燃料になる。

 列の前方で、誰かが大きな声を出した。
「誰のせいだよ!」
 怒りが跳ねる。

 私は耳栓を押さえ、水を一口飲んだ。
 燃料にならない。怒りを受けない。私は私の運用を守る。

 すると、スタッフ導線を走る影が見えた。
 榊さんだ。
 青い顔で、スマホを握りしめ、走っている。汗。焦り。現場の匂い。

 榊さんが、ユズの近くで止まり、短く頭を下げた――ように見えた。
 ユズは腕を組んだまま、何かを言っている。近い。近い。危うい。

 私は目を逸らした。追わない。でも、心臓がうるさい。

 そして、会場内に入る直前、また通知が来た。
「一部演出変更」
 演出変更。

 私の喉が乾いた。
 演出が変わるのは、何かが壊れた時だ。
 誰かが嘘をついたのか。
 誰かが、何かを要求したのか。

 答え合わせが、近い。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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