
公式から来たはずの連絡が、いちばん怪しい――私はスクショを保存した
駅前は、光が多すぎた。看板の明滅、車のライト、信号の点滅。全部が私の目を刺す。耳栓をしているのに、騒音は皮膚から入ってくる。
私は柱の影に立ち、片耳だけ耳栓を入れて、スマホを握った。さやが作ったチェックリストが、画面に並ぶ。
・待ち合わせ場所は人通りの多い場所
・一人で近づかない(ミレイ同伴)
・名刺や公式連絡先が確認できない場合は会話を打ち切る
・会話は短く、記録は残す(録音など具体手段は書かない。メモと記憶で十分)
・危険を感じたら即離脱
ミレイが隣で、推し色リボンを結び直した。
「ひより、顔、真っ青。深呼吸。吸って、吐いて。私、いるから」
「……うん」
私は頷いても、足の裏が冷たい。怖い。怖いけど、ここに来た。逃げるだけの推し活は、もう嫌だ。
時間ぴったりに、メッセージが来た。
「改札前。黒いコート。手に白い封筒」
私は改札を見た。人の流れ。黒いコートが多すぎる。白い封筒も、多すぎる。
ミレイが小さく笑った。
「公式、擬態うますぎ。逆に怪しいわ」
「……うん」
そのとき、背後から声がした。女性の声。落ち着いている。音量は普通。でも、私の耳はそれでも跳ねる。
待ち合わせのやり取りでは、私は下の名前だけを伝えていた。相手が本当に公式側なら、それ以上を求めないはずだと思ったから。
「……ひよりさん、ですか」
私は振り向いた。黒いコート。白い封筒。年齢は私と同じくらいか、少し上。疲れている顔。目の下に薄い影。名札はない。名刺も、まだ出ない。
「……はい」
「驚かせてすみません。私は、広報の担当です。推し――宵玻璃(よいは)の、運用を」
推しの名前が出た瞬間、胸がぎゅっとなる。正しい情報。知っている人。だからこそ怖い。私の口は乾いた。
さやの文面が頭の中で鳴る。
“敵を間違えないで。でも、線は引け。”
私は言った。
「所属と、お名前を確認できますか」
私は続けた。
「DMの文面だけでは判断できません。公式の問い合わせ窓口から、あなたが『広報担当』であることが確認できる形にできますか」
女性は一瞬だけ目を伏せた。
「……ここで全部は出せません。ごめんなさい。言えないことが多いんです」
女性は一瞬だけ、胸元の社員証らしいものをこちらに向けた。写真を撮れるほど長くは見せない。
「榊と申します。広報の担当です」
「言えないなら、私は言えません。私の個人情報も、出せません」
ミレイが横から口を挟んだ。
「ひよりの言う通り。まず公式連絡先。フォームとか。定型のやつ」
女性は白い封筒を持ち直し、低い声で言った。
「あなたの文章は、攻撃じゃない。そういう人が必要なんです。でも――憶測を広げないで。今、ファンが一番の燃料になる」
燃料。
私は、その言葉に刺された。正しい。正しいけど、怖い。推し活は、いつでも火のそばにある。
女性は続けた。
「休止は、本人の意思だけじゃない。……それだけは、覚えて」
「……それ、言っていいんですか」
「言える範囲です。ここまで」
私は、封筒に目を落とした。差出人は書かれていない。中身も見えない。
「それは……」
「受け取らなくていい。今日は“会った”だけでいい。あなた達に、お願いがある。でも、今夜は言えない」
言えない。多い。怖い。
私は、言葉を選んだ。
「お願いなら、条件をください。私達が守るべき線を、明確に」
女性は、ほんの少しだけ頷いた。
「攻撃をしない。憶測を回さない。個人を晒さない。推しを盾にしない。――その代わり、言葉は届く道を残す」
私は、胸の奥の硬いものが、少しだけ動くのを感じた。
その瞬間、私のスマホが震えた。
見知らぬDM。
「いま会ってるな。見てる。帰れ」
私は反射で画面を隠した。ミレイが覗き込む。
「……これ、やばい。誰か、いる?」
私の視界が急に狭くなる。耳栓の奥で心臓が暴れる。
榊さんは、私の顔色を見て、小さく言った。
「敵はファンじゃない。間違えないで」
その言葉が、重い。
でも、次に来た通知が、さらに重かった。
TicketLot「現場イベント 追加販売 開始」
現場。
私が落ちたはずの場所。
扉が、また開いた。
私は、購入画面を開いた。
“誰かが見てる”恐怖と、“推しに会える”希望が、同時に喉に詰まる。
そして、購入ボタンの上で――指が止まった。
「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」
※本作品はAI生成本文を含みます
作者紹介

ヒトカケラ。
好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。
公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel









