連載

【推しノベル】「最前列じゃなくても」第3話

鍵垢の向こう側で、同担が手を振った――怖いのに、嬉しい

21:00。
 TuneLiveの待機画面が、呼吸の合図みたいに点滅する。私はイヤホンをつけた。外の雑音が増えそうな日は耳栓を使うことが多いけれど、推しの声だけは逃したくない。
 だから今日は、片耳だけ耳栓を外して、もう片方で環境音を薄めることにした。推しの声を、ちゃんと受け取りたい。

 配信が始まった。

「今日も、宵の端っこで。」

 その一言で、胸がふっとほどけた。宵玻璃(よいは)の声は、静かで、でも芯があって、私の体の奥に落ち着く。大きな音じゃないのに、確実に届く。

「今日は……急でごめん。心配させたくなくて。えっと、無理しないで。ちゃんと、帰って。」

 “無理しないで”。その言葉が、私の弱みを肯定するみたいで、涙が出そうになる。私は泣くのが苦手だ。泣くと息が乱れて、音が増えるから。でも、今夜は泣いていい気がした。

 配信の後半、宵玻璃は少しだけ間を置いて言った。
「最近、いろいろあるけど……誰かを攻撃するために、僕を使わないでほしい。お願い」

 タイムラインの火を思い出す。私の一文。引用。正しさの針。私は唇を噛んだ。

 配信が終わると、ミレイからメッセージが来た。
「今、こっちの連絡網に入れる? 静かな推し活派の人がいる」

 続けて、招待リンク。私は怖かった。知らない場所は、音が増える。人が増える。でも、孤立はもっと怖い。私はリンクを押した。

 グループ通話ではなく、チャット。静か。文字。私の得意領域だ。

「はじめまして。さやです」
 最初に来たのは、落ち着いた挨拶だった。
「現場での導線とか、トラブルの共有とか、静かにやります。無理しないのがルール」

 私は思わず返した。
「……助かります」
「ひよりさん、ですよね。耳栓持ってるって聞きました。大丈夫、使っていいんですよ」
「……はい」

 さやの言葉は、短いのに安心させる。私は少しだけ、肩の力が抜けた。

 そのとき、チャットに新しい参加者が入った。

「ユズです。皆さんのために、ルールを整えますね」

 文面は丁寧で、笑顔のスタンプ付き。でも、温度が冷たい。私は昨夜の引用を思い出した。あの“空気読んで”の人と、雰囲気が似ている。

 ユズは続けた。
「新規の方は、まず様子見で。間違った情報を流すと推しに迷惑がかかりますから」

 私の指が止まる。私は新規だ。間違えやすい。声が小さい。だから、黙るしかない。そう思った瞬間、ミレイが打った。

「新規とか古参とか関係ないよ。ひより、文章うまいし、助かってる」
「ありがとう……でも、迷惑はかけたくない」
「迷惑の線引きは“運用”でやる。感情で殴らない」
さやが、さらに短く続ける。

 私はチャット欄を見つめ、喉の奥が熱くなった。怖いのに、嬉しい。鍵の向こうに、手を振ってくれる人がいる。

 ……でも。
 通知がまた鳴った。

 Murmurの別画面で、私の投稿が大手アカウントに引用されていた。
「この人、過激な言葉を使ってます。皆さん、反応しないで。推しを守りましょうね」

 引用元は、yuzu-kingdom。
 ユズ。

 私は、椅子の背に沈み込む。耳栓のケースが汗で滑る。

 そして――宵玻璃の投稿通知が一瞬だけ出て、消えた。
「今夜、話す」

 消えた。
 消された。

 私の画面は、悲鳴の前兆で、静かに震えていた。

「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」

※本作品はAI生成本文を含みます

作者紹介

ヒトカケラ。

好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。

公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel

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