
鍵垢の向こう側で、同担が手を振った――怖いのに、嬉しい
21:00。
TuneLiveの待機画面が、呼吸の合図みたいに点滅する。私はイヤホンをつけた。外の雑音が増えそうな日は耳栓を使うことが多いけれど、推しの声だけは逃したくない。
だから今日は、片耳だけ耳栓を外して、もう片方で環境音を薄めることにした。推しの声を、ちゃんと受け取りたい。
配信が始まった。
「今日も、宵の端っこで。」
その一言で、胸がふっとほどけた。宵玻璃(よいは)の声は、静かで、でも芯があって、私の体の奥に落ち着く。大きな音じゃないのに、確実に届く。
「今日は……急でごめん。心配させたくなくて。えっと、無理しないで。ちゃんと、帰って。」
“無理しないで”。その言葉が、私の弱みを肯定するみたいで、涙が出そうになる。私は泣くのが苦手だ。泣くと息が乱れて、音が増えるから。でも、今夜は泣いていい気がした。
配信の後半、宵玻璃は少しだけ間を置いて言った。
「最近、いろいろあるけど……誰かを攻撃するために、僕を使わないでほしい。お願い」
タイムラインの火を思い出す。私の一文。引用。正しさの針。私は唇を噛んだ。
配信が終わると、ミレイからメッセージが来た。
「今、こっちの連絡網に入れる? 静かな推し活派の人がいる」
続けて、招待リンク。私は怖かった。知らない場所は、音が増える。人が増える。でも、孤立はもっと怖い。私はリンクを押した。
グループ通話ではなく、チャット。静か。文字。私の得意領域だ。
「はじめまして。さやです」
最初に来たのは、落ち着いた挨拶だった。
「現場での導線とか、トラブルの共有とか、静かにやります。無理しないのがルール」
私は思わず返した。
「……助かります」
「ひよりさん、ですよね。耳栓持ってるって聞きました。大丈夫、使っていいんですよ」
「……はい」
さやの言葉は、短いのに安心させる。私は少しだけ、肩の力が抜けた。
そのとき、チャットに新しい参加者が入った。
「ユズです。皆さんのために、ルールを整えますね」
文面は丁寧で、笑顔のスタンプ付き。でも、温度が冷たい。私は昨夜の引用を思い出した。あの“空気読んで”の人と、雰囲気が似ている。
ユズは続けた。
「新規の方は、まず様子見で。間違った情報を流すと推しに迷惑がかかりますから」
私の指が止まる。私は新規だ。間違えやすい。声が小さい。だから、黙るしかない。そう思った瞬間、ミレイが打った。
「新規とか古参とか関係ないよ。ひより、文章うまいし、助かってる」
「ありがとう……でも、迷惑はかけたくない」
「迷惑の線引きは“運用”でやる。感情で殴らない」
さやが、さらに短く続ける。
私はチャット欄を見つめ、喉の奥が熱くなった。怖いのに、嬉しい。鍵の向こうに、手を振ってくれる人がいる。
……でも。
通知がまた鳴った。
Murmurの別画面で、私の投稿が大手アカウントに引用されていた。
「この人、過激な言葉を使ってます。皆さん、反応しないで。推しを守りましょうね」
引用元は、yuzu-kingdom。
ユズ。
私は、椅子の背に沈み込む。耳栓のケースが汗で滑る。
そして――宵玻璃の投稿通知が一瞬だけ出て、消えた。
「今夜、話す」
消えた。
消された。
私の画面は、悲鳴の前兆で、静かに震えていた。
「最前列に立てない私が、推し活戦線の司令塔になった理由――当落・遠征・炎上の全部を『好き』に変えるまで」
※本作品はAI生成本文を含みます
作者紹介

ヒトカケラ。
好きを少しずつ詰め込んだお話を、AIにも手伝ってもらいながら書いてるので、読んでもらえるとうれしいです。
公式サイト:https://hitokakera.com/
作者X:https://x.com/hitokakeranovel










